【食べ方のマナーを知る前に】アフタヌーンティーとは?
アフタヌーンティーの歴史
アフタヌーンティーの歴史は19世紀のイギリス貴族の文化にさかのぼります。7代目ベッドフォード公爵夫人のアンナ・マリア(1788〜1861)が始まりとされています。
19世紀の貴族の食生活は、朝食と夕食をしっかり食べ、昼食は少なめというものでした。朝食は、イングリッシュ・ブレックファーストと呼ばれる品数の多いものでした。
昼食はピクニックなどで少量のパンや干し肉、フルーツなどを少し食べていました。夕食は、社交を兼ねた晩餐会だったので、音楽会や観劇の後の20時頃からコース料理が始まります。
そのため、昼食から夕食までの時間が長く、空腹はかなりなものになります。そこでアンナ・マリアは、午後の3時頃から5時頃の間に、紅茶を飲みながらサンドイッチや焼き菓子を食べ、、空腹を満たすことにしました。
最初は一人だけの楽しみだったようです。やがて、屋敷を訪れる婦人たちをドローイング・ルームと呼ばれる応接間でもてなすようになります。
それが評判を呼び、アフタヌーンティーは貴婦人たちの午後の社交として定着していきました。
アフタヌーンティーは何時から何時まで?
アフタヌーンティーと呼ばれるお茶会の時間は午後3時~5時頃をさします。アフタヌーンティーと同じ意味として用いられることのあるハイティーは、本来はアフタヌーンティーよりも遅い時間のお茶会のことをさします。
ハイティーというのは、アフタヌーンティーよりも遅い時間に行う食習慣です。もともとは労働者階級・農民の生活環境から始まったものです。
ハイティーは事実上の夕食の時間だったので、サンドイッチなどの軽食やお菓子類だけではなく、肉料理や魚料理がメインとして並びます。
おやつの時間がアフタヌーンティー、ディナーの時間がハイティーと覚えておけば安心です。
アフタヌーンティーで使う食器の名前
アフタヌーンティーでよく使われる食器は以下です。
- カップ:紅茶をいれるコップのこと
- ソーサー:カップの下にあるお皿のこと
- ティーポット:紅茶のはいった陶器のうつわのこと
- クリーマー:紅茶にいれるミルクの入れ物のこと
- シュガー:紅茶にいれる砂糖の入れ物のこと
- ジャグ:しぶくなった紅茶を薄めるためのお湯がはいっている入れ物のこと
- ケーキスタンド:ケーキやスコーンなどお皿が3段のった食器のこと
これらを覚えておけばアフタヌーンティーでは困りません。
【食べ方のマナーを知る前に】アフタヌーンティーの料理
アフタヌーンティーに欠かせない3つの料理
アフタヌーンティーにはかかせない料理が3つあります。
- サンドイッチ
- スコーン
- ペストリー(ケーキ)
の3つの料理です。この3つの料理と紅茶がそろったものをアフタヌーンティーとよびます。
お店によっては、サンドイッチ・スコーン・ペストリー以外にもフルーツやパイやお饅頭のような温かいスイーツやピクルス、アミューズ、スープといった料理を提供してくれるところもありますが、メインはサンドイッチ・スコーン・ペストリーです。食べる順序も、基本はメインの「サンドイッチ、スコーン、ペストリー」の順です。
しかし、アフタヌーンティーはマナーが厳しくないので、スコーンから先に食べても、ついペストリーに手を伸ばしても問題はありません。
サンドイッチについて
多くの場合、サンドイッチはケーキスタンドの一番下にあります。サンドイッチなので手でもって食べても問題ありません。
より上品に食べたいという方は、サンドイッチを取り皿にとり、フォークとナイフで一口大に切って食べます。アフタヌーンティーの雰囲気にあわせて使い分けましょう。
気心しれたお友達と食べるときは手で持って。ビジネスや初対面の方と食べるときは、フォークとナイフを使いましょう。
ちなみに、アフタヌーンティーのサンドイッチは、昔は「キュウリサンドイッチ」が定番でした。19世紀では、農園を持ち、農作業をする労働者を雇い、収穫したばかりの新鮮なキュウリをパンに挟んでアフタヌーンティーに食べることはよほどのお金持ちしかできませんでした。
昔はキュウリサンドイッチを振る舞うことで、自分の富を見せつけることができたのです。キュウリサンドは貴族のステイタスでした。
スコーンについて
スコーンはケーキスタンドの2段目にある場合と、ケーキスタンドとは別のお皿で提供される場合があります。スコーンも手で割って食べても、ナイフとフォークを使って食べてもどちらでも問題ありません。
手で食べる場合は、縦に一口大に割ります。割る際に粉がでるので、必ず取り皿の上でわります。
ナイフとフォークを使って食べる場合、横にわります。縦に切るのはマナー違反なので注意してください。
スコーンはジャムやクリームをつけて食べるのがマナーです。ぱさぱさした食感が好きではないという人は、クリームをたっぷりつけることでぱさぱさした食感がなくなります。
ペストリー(ケーキ)について
ペストリー(ケーキ)はケーキスタンドの1番上にあります。ケーキは取り皿に取ったあと、フォークとナイフをつかって食べます。
ホテルによっては、最後のペストリーやガトーは、サンドイッチやスコーンと一緒に持ってこない場合があります。その場合は、先にサンドイッチやスコーンを食べましょう。
頃合いをみてウェイターの方がペストリーをもってきてくれます。その場合、どのペストリーを食べたいか選ばせてくれる場合が多いです。
ケーキは三角形の先端部分が左に、太い部分が右になるように取り置くのがマナーです。食べる時は左側から1口大に切って食べます。
小さく切って食べることで、クリームやジャムが口の周りにつきません。見た目もエレガントです。
アフタヌーンティーの正しい食べ方①:食べる順番
先ほども少し説明しましたが、アフタヌーンティーでは食べる順番が決まっています。
サンドイッチ・スコーン・ケーキの順番で、ケーキスタンドの下からあるものから頂きます。
まずはサンドウィッチです。フォークやナイフを使わずに手で食べてもマナー違反ではないので、安心して食べられます。
次にスコーンを食べます。まるごと食べるようにかじるのではなく、お皿にとって、一口大にして食べます。
次に、ケーキです。ケーキの順になったら、チョコレートやクッキーなど他のお菓子を食べても大丈夫です。
アフタヌーンティーでは下のお皿にのっている料理から食べるのが基本的なルールです。食べる順番が分からなくなってしまったら、下にあるものから食べていけば大丈夫です。
アフタヌーンティーの正しい食べ方②:料理の取り分け
取り分ける際はナイフとフォークを使う
ケーキスタンドから料理を取り分けるさいには、フォークとナイフを使います。フォークとナイフを使って自分の取り皿に移します。
パンやサンドイッチ・スコーンはフォークとナイフを使わずに、手で食べても良い料理です。しかし、フォークとナイフで取り分けた方がエレガントに見えます。手も汚れません。
クッキーやマドレーヌ・チョコレートなど、フォークとナイフで取り分けるものが難しい小さなものは手で取り分けてもマナー違反ではありません。その際にも、いったん自分の取り皿にうつします。
ケーキスタンドや大皿から取り皿を使わずに、直接食べるのはマナー違反です。粉やくずがこぼれるのを防ぐためにも、取り皿を使って食べます。
一口サイズに切って食べる
アフタヌーンティーではすべての料理を一口大にしてから食べます。スコーンを手でわる場合も、一口大に割ります。
サンドイッチを手でもって食べる場合でも、まるごとかぶりつくように食べるのではなく、一口大で食べていきます。アフタヌーンティーはもともとおやつ時に会話を楽しむためのお料理です。
ですから、口いっぱいに料理をほおばるのはマナー違反です。会話をしながら食べることができるように、一口大に切ったり割ったりしながら料理を頂きます。
一口大にすることで、ジャムやソースで口の周りを汚す心配がなくなります。また、洋服を汚す心配もなくなります。
自分や相手の人に不快感を与えず、楽しいアフタヌーンティーを楽しむためにも、料理は一口大にして頂きましょう。
アフタヌーンティーの正しい食べ方③:スコーンの食べ方・割り方
スコーンの食べ方
先ほども説明しましたが、スコーンは手で割って食べても、ナイフとフォークを使って食べてもどちらでも問題ありません。手で食べる場合は、縦に一口大に割ります。
割る際に粉がでるので、必ず取り皿の上でわります。ナイフとフォークを使って食べる場合、横に切ります。
縦に切るのはマナー違反なので注意してください。もし手でわるか、ナイフとフォークをつかって切るのかで迷ったら相手の方の食べ方に合わせるのがいいでしょう。
ナイフとフォークを使うのが苦手だという方は手でわるのがおすすめです。アフタヌーンティーのメインは会話を楽しむことです。
ナイフとフォークの作法にいっぱいになってしまって会話が楽しめないのはもったいないからです。
クロテッドクリームとは?
スコーンは一口大にしたあと、ジャムやクロテッドクリームをぬっていただきます。クロテッドクリームはバターと生クリームの中間にあるクリームです。
バターよりも柔らかくてあっさりしている味わいですが、生クリームを泡立てたホイップクリームよりはコクがあります。イギリスの南西部で昔からよく使われており、イギリスではスコーンを食べるときには必ずついていきます。
クロテッドクリームをたっぷりスコーンにつけることで、スコーン特有のぱさぱさした食感がなくなります。また、コクのある味わいなので、紅茶のあっさりとした味とも相性が抜群です。
アフタヌーンティーの主役であるスコーンと紅茶の美味しさをひきたてるクリームなので、たっぷりと頂きましょう。
【食べ方に加えて】アフタヌーンティーの紅茶の飲み方
ティーカップの持ち方
アフタヌーンティーにかかせない紅茶では、カップを両手でもって飲むのはマナー違反です。かならず利き手のみでカップを持ちます。
カップを持つときは、取っての部分を持ちます。丸い部分を持つと、紅茶の熱で熱いうえに見た目も美しくないのでやめましょう。
テーブルとイスの席がはなれている場合は、ソーサーをもって紅茶を飲みましょう。その場合は利き手でカップを持ち、もう片方の手でソーサーを持ちます。
ソーサーをもつ場合は、親指をソーサーの表面のはしにそえ、残りの指は裏面にそえます。親指と人差し指だけで持つといったような持ち方はやめましょう。
ティースプーンの位置
紅茶に砂糖やミルクをいれた後は、ティースプーンで紅茶をかき混ぜます。ティースプーンは紅茶がサーブされるときに正面に置いてある、小さなスプーンです。
紅茶をかき混ぜるさいに、カチャカチャと音をたてるのはマナー違反です。会話をさえぎってしまう可能性があるので、音をたてないようにゆっくりと混ぜます。
使い終えたティースプーンは正面ではなく、正面とは反対側に置きます。砂糖やミルクをいれずティースプーンを使わなかった場合も、反対側に置き直します。
1杯目は紅茶の風味を楽しむ
紅茶は、1杯目はストレートで頂きます。ストレートで頂くことで、紅茶の香りや風味を楽しむことができます。
一口飲んでみて飲みにくいようだったら、砂糖を加えます。角砂糖の場合は、まずティースプーンに角砂糖を取り分けます。
ティースプーンをつかって角砂糖を紅茶の中にいれ、砂糖をとかします。
スティックシュガーの場合は紅茶に入れたあとに、ティースプーンでかき混ぜます。
ミルクティーの入れ方
ミルクティーにする場合は、先に砂糖をとかします。ティースプーンで砂糖をとかし、紅茶がくるくるとまわっている間に、静かに注ぎ入れます。
そのさいに、高い位置から注ぐとミルクがはねるので、カップのふちにそわせるようにして注ぎます。
【食べ方に加えて】アフタヌーンティーを美しく楽しむ所作
座り方や姿勢も大事
アフタヌーンティーを椅子で頂くときは、お尻が座面の3分の2あたりのところに腰かけます。深くまで座りません。
背もたれは使わずに背筋を伸ばします。肩はリラックスさせて話しやすいような姿勢をとります。
足を組むのはマナー違反なのでやめましょう。
ソファーの場合も同様です。深く腰かけて背もたれにもたれるのはだらしなく見えてしまうのでやめましょう。
ナプキンの使い方
ナプキンは食事を始める際に、半分に折って、膝の上に置きます。料理のソースやジャムで洋服が汚れるのを防ぐためです。
口をふいたり、汚れた手をふいたりするときは、折ってあるナプキンの角の内側でふきます。外側でふくと汚れが服についてしまうからです。
ナプキンは、堂々と汚して大丈夫です。自分のティッシュやハンカチで拭くのは、マナー違反なのでやめましょう。
食後はきちんとたたむのではなく、ふわっとテーブルに置くのがマナーです。きちんとたたむとおいしくなかったという意味になるので注意しましょう。
アフタヌーンティーの際の服装
アフタヌーンティーを楽しめる高級ホテルではドレスコードが設けられている場合があります。ですので、男女問わず以下のような服装は避けましょう。
- キャミソールやタンクトップなどの上半身の露出度の高いもの
- Tシャツやジーンズなどのカジュアルなもの
- ショートパンツ・ミニスカート・ハーフパンツなどの脚の露出度の高いもの
- サンダル・ミュールなどの素足ではくもの
- スニーカー・ブーツなどのカジュアルなもの
アフタヌーンティーに相応しい格好は、カジュアルエレガンスやスマートカジュアルとよばれる綺麗めの服装です。
女性は膝丈~ロング丈のワンピース、もしくは、華やかなジャケットとスカートです。どちらも、ストッキングを着用して、足元はパンプスにするのがおすすめです。
男性はジャケットとパンツ、もしくは、襟付きのシャツとパンツです。パンツはくるぶしまである丈のものを選びましょう。
足元は革靴がおすすめです。
同席者への配慮も必要!
アフタヌーンティーは相手との会話を楽しむのが目的です。ですので、会話をしながらゆっくりと時間をかけて頂くのが正しいマナーです。
食べることに夢中になって会話をおろそかにしたり、マナーに反するような食べ方をしたりするのは相手を不快な気持ちにさせてしまいます。服装も同伴者に恥をかかせないようなものを選びましょう。
また、声の大きさにも注意が必要です。アフタヌーンティーを楽しめる場所は落ち着いた雰囲気なので、あまりに大きい声で笑ったりするのは他のお客さんの迷惑になるのでやめましょう。
アフタヌーンティーの正しい食べ方は?スコーンの割り方やおかわりの方法のまとめ
アフタヌーンティーで気を付けたいふるまいのマナーを紹介しました。アフタヌーンティーはカジュアルな食事の席なので、マナーに神経質になる必要はありませんが、マナーをおさえた方がエレガントに見えます。
楽しくスマートにアフタヌーンティーを楽しみましょう。