京都・愛宕神社とは?
全国各地にある900余りの愛宕神社の本社である京都の愛宕神社は、一体どのような歴史を辿り、人々に親しまれてきたのでしょうか。
京都・愛宕神社の歴史
愛宕神社の歴史は古く、創祀年代は701〜704年頃。
実に1300年以上の歴史を誇っています。
修験道の祖とされている役行者と白山の開祖として知られる泰澄が朝廷の許しを得て、朝日峰(=愛宕山)に神廟を建立。
それ以来、京都市の最高峰である愛宕山に鎮座することになります。
神仏習合の山岳修行霊場として早くから名高く、9世紀頃には比叡山などと並んで七高山のひとつに数えられていました。
江戸時代末期まで本殿に本地仏の勝軍地蔵を、現在若宮社である奥の院には愛宕山の天狗太郎が祀られていました。
愛宕神社は江戸末期まで白雲寺と呼ばれており、境内には5つ余りの寺院が立地し、その寺院に所属していた社僧が存在していました。
明治初年の廃仏毀釈により白雲寺は廃絶され現在の愛宕神社となりました。
その際、本地仏は金蔵寺に移され現在も大切に祀られています。
また明智光秀が愛宕山で3回おみくじを引いて3回とも「凶」が出たにも関わらず「本能寺の変」を起こしたことはこの地域では有名な話です。
ご利益は?千日詣りで効果が跳ね上がる?
愛宕神社は火伏せの神「あたごさん」の愛称で地域の人々に親しまれています。
ご利益は「火迺要慎(=火の用心)」。
家内安全、身体健全、厄除け、交通安全など現在ではあらゆる方面のご利益を得ることができるお守りが用意されています。
地域住民には「火伏せの神」として信仰されており、鎮火祭や雷神祭といった、火の災いを祓う行事が多数。
また京都の愛宕神社では通称千日詣りと呼ばれている、千日通夜祭が大変有名です。
毎年7月31日夜〜8月1日早朝に愛宕神社を参拝すると、千日分の火伏せ防火のご利益があるとされています。
千日詣りには毎年数万人の参拝者で境内が埋め尽くされる、盛大な祭事。
この祭事の時はバスも深夜まで運行される、と言うのですからお大晦日から元旦にかけての趣が感じられます。
31日21時には夕御饌祭(ゆうみけさい)と言う山伏によるゴマ炊き神事を齋行。日付が変わって深夜2時には朝御饌祭(あさみけさい)では人長の舞が奉奏される鎮火神事が行われます。
御朱印はある?
愛宕神社の御朱印は一風変わっています。
本来、「奉拝」ではなく「登拝」と書かれている点です。
また愛宕神社では神の使いと言われているイノシシの刻印が。
御朱印は境内の授与所にていただけます。
愛宕神社では3歳までに参拝をすると一生火の災いを避けることができる、とされており、小さなお子さんを連れて参拝する家族も見受けられます。
祭典の日はいつ?
祭典の日は数多くあり毎月の祭事では1日、15日、23日には月次祭が行われています。
千日詣り以外でも四季折々の行事のほか、嵯峨祭、神幸祭、神楽講祭、還幸祭といった祭典が執り行われています。
愛宕神社は火伏せの神様だけあり、鎮火祭、鎮火講祭、雷神祭、火焚祭、火臼祭といった火に纏わる祭典が多いのも特徴ですね。
愛宕神社の公式ホームページで月々の祭典の日にちの確認ができます。
参拝におすすめの月は?
愛宕神社の参拝におすすめの月は春の風物詩でもある嵯峨祭の行われる5月。
5月の中頃、1週間に渡り行われる嵯峨祭は、何といっても還幸祭が見物です。
魔物を祓って清める龍鉾、麒麟鉾、潟鉾、菊鉾、牡丹鉾の5本の剣鉾、愛宕神社、野宮神社それぞれの神輿、子ども神輿、稚児行列に獅子舞などなど。
嵯峨周辺をこれらの行列が練り歩く様子はぜひ一度見学してほしい祭典です。
ハイキングコースを楽しみながら登山気分で愛宕神社を堪能したいなら、紅葉の綺麗な11月頃もおすすめです。
古くから使われていた参道を歩きながら、いにしえの人々に思いを馳せてみるのもいいかもしれません。
京都・愛宕神社までのアクセス方法【登山&下山ルートを確認】
愛宕神社へのアクセスは愛宕山山頂のため、すぐ近くまで車などの乗り物で行くことはできず麓より登山をしなければなりません。
登山ルートは3ルートほどあります。
ゆずの里の水尾から登るルート、清滝から表参道を登るルート、樒原(しきみがはら)からの神明峠ルートなどがあります。
しかし昨年関西を直撃した大型台風と豪雨の影響でかなりの被害が出ました。
台風直撃直後に比べれば、ボランティアの方々の尽力もあり登山道の倒木などは片付けられているようです。
それでも愛宕神社への参拝には普段よりも時間がかかること、道が従来と違い歩きにくいことを考慮しておいてください。
樒原からのルートでは明智越と呼ばれる場所があります。
この場所は本能寺の変の際、明智光秀が亀山から軍を三段に備えたうちのひとつのため明智越の名がつきました。
台風直撃からかなり経っていますが、山中が未だに荒れている場所があるようです。
特に月輪寺周辺の被害が大きいようですから登山初心者にはおすすめできません。
愛宕神社の参拝を考えているなら清滝から入る表参道ルートを時間に余裕を持った状態で登山することをおすすめします。
京都・愛宕神社周辺のおすすめ観光スポット5選【月輪寺/空也の滝】
では、愛宕神社周辺の観光スポットをみていきましょう。
愛宕神社周辺には、以下の観光スポットがあります。
- 空也の滝
- 嵯峨鳥居本
- 愛宕念仏寺
- 愛宕遊園跡
- 月輪寺
続いて、愛宕神社周辺の観光スポットを、それぞれ詳しくみていきます。
愛宕神社周辺の観光スポット①:空也の滝
愛宕山の中腹にある滝。
高さ15mほどの岩場から流れ落ちる滝は、それほど大きなものではありませんが、独特の雰囲気を醸し出しています。
空也の滝の歴史も古く、700年代に空也上人が修行をしたことから、つけられた名だそうです。
実は現在でも滝行が行われているとのこと。
清滝川へと注ぐ滝の水は夏でも辺りをひんやりとさせており、信仰の場であることが肌身に感じて伝わってくる場所です。
滝近くの苔生した岩場には不動明王や神使の像がそこかしこに置かれ、この場所が神聖な場所であることを教えてくれています。
空也の滝
住所:京都府京都市右京区嵯峨清滝空也滝町
電話番号:075-343-0548(京都総合観光案内所 / 京なび)
入場料や利用料:無料
URL:京都市観光協会
愛宕神社周辺の観光スポット②:嵯峨鳥居本
右京区の西部にあたる愛宕神社の一の鳥居近くの集落、嵯峨鳥居本(さがとりいもと)。
この集落は愛宕神社への参詣道であり、この名がついたとされています。
愛宕神社の門前町である町家風の民家と農村の藁葺き屋根が共存している、珍しい地区。
1979(昭和54)年に国の重要伝統的建造群保存地区に指定されています。
集落内には化野念仏寺があり、美しい日本ならではの自然を背景に立ち並ぶ様はどこか懐かしさを覚える光景です。
保存地区の奥には茅葺屋根の「平野屋」は江戸時代から続く鮎料理で知られる
料亭で、現在もその当時の雰囲気を残して営業しています。
同じく鮎を出す茶屋として「つたや」も400年を誇る老舗茶屋として有名。
タイムスリップしたような街並みを楽しめる町です。
嵯峨鳥居本
住所:京都府京都市右京区嵯峨鳥居本
URL:京都総合観光案内所 / 京なび
愛宕神社周辺の観光スポット③:愛宕念仏寺
愛宕神社と同じ「愛宕」と書いて「おたぎ」。
愛宕念仏寺の歴史は古く、奈良時代末期にまで遡ります。
聖武天皇の娘である称徳天皇が寺を建立したことから愛宕念仏寺の歴史が始まるのです。
しかし、平安時代初頭に鴨川が氾濫を起こし全てが流されてしまい廃寺に。
その後、復興を命じられたのが天台宗の僧侶、千観(918〜984)です。
千観の両親は、子を授かりたい一心で清水寺へ欠かさずお参りしていました。
その願いが聞き入れられたのか、ある日母親の夢枕に観音様が現れ、蓮華の花を頂き千観を授かったのだとか。
千手観音にあやかり、千と観の二文字をいただき、千観丸と名付けたのだそうです。
千観はいつも念仏を唱えていたことから愛宕念仏寺、と呼ばれるようになりました。
参拝者の手で彫られた1200体の羅漢さんが境内に立ち並んでいます。
苔生した羅漢さんの表情はさまざま。
あなたの好きな表情の羅漢さんを見つけてみてください。
こちらの本堂は鎌倉時代中期に再建されたもので、重要文化財に指定されています。
1922(大正11)年に保存のため、現在の場所に移築されたのだそうです。
愛宕念仏寺
住所:京都市右京区嵯峨鳥居本深谷町 2-5
電話番号:075-285-1549
営業時間: 8時〜17時 (閉門 4:45)
定休日:なし
拝観料:¥300
URL:http://www.otagiji.com/
愛宕神社周辺の観光スポット④:愛宕遊園跡
愛宕神社は昭和初期にかけ今でいうテーマパークのように周辺がリゾート開発されていたのを知っていますか。
廃墟好きにはたまらない愛宕遊園地跡や愛宕ケーブル駅舎跡などが廃墟となり、自然の中に埋もれているのです。
かつて愛宕神社周辺は、京福電鉄の嵐山駅から参詣路線として愛宕山鉄道が存在していました。
普通鉄道の平坦線とケーブルカーの鋼索線で山頂まで行けるようになっていたのです。
山頂近くには、ホテルや山上遊園があり、スキー場まであったと言いますから、本当にバブルな感じですね。
現在は見る影もないのは戦時中「ぜいたくは敵」として生活に必要のない余興は敵視され控えるよう、国策として進めていたためです。
世界恐慌が襲い不況となっていく中、これらのリゾート開発された建物や鉄道は廃業、廃線を余儀なくされました。
今ではその廃墟が魅力に感じる人達が足繁く通っています。
山頂近くにあり、それぞれの廃墟には栄華を誇った頃の説明が書かれています。
廃墟内に入ることは危険を伴うので、近くで見学するだけに留めましょう。
愛宕遊園跡
住所:京都府京都市右京区嵯峨愛宕町
愛宕神社周辺の観光スポット⑤:月輪寺
月輪寺(つきのわでら)という名称は地中より発掘した宝鏡の背面に刻まれていた「人天満月輪」からの銘だそうです。
愛宕山の山腹に位置する月輪寺は、昨年の台風で周辺の木々が倒木していまい、現在も愛宕神社と月輪寺を結ぶルートは立ち入りができない状況。
麓から月輪寺へと続くルートはだいぶ整備されてきました。
まだまだ危ない箇所などもあるため、入山は午前中にするように、というお達しが出ているようです。
月輪寺は781(天応1)年慶俊僧都が開創。
空也の滝の名の由来となった空也や新しい仏教を切り開いた法然なども登山参禅していた、と伝えられています。
宝物殿には重要文化財に指定されている数々の立像を所蔵しています。その中には空也上人の立像もあります。
境内にある時雨(しぐれ)桜は、親鸞が流罪になった際に植えた、とされ5月頃晴天でも葉から雫が落ちる、というちょっと不思議な桜も。
また天然記念物である本石楠(しゃくなげ)も美しい、と評判です。
月輪寺
住所:右京区嵯峨清滝月の輪町7
電話番号:075-871-1376
営業時間:9時半~15時半
定休日:なし
入場料や利用料:無料
URL:京都総合観光案内所 / 京なび
1300年あまりの歴史を持つ愛宕神社の総本宮
総本宮の京都愛宕神社は、かつてランドマークとしてかなり栄えていました。
昭和初期にはまるでテーマパークのように様々な娯楽施設があり栄華を極めていたことがわかりました。
今ではかつての賑わいは遠いものになってしまいました。
観光客でごった返す京都市にあって、ひっそりと佇む愛宕神社やその周辺の寺院は本来の街の姿を魅せてくれているのかもしれません。
昨年直撃した台風や豪雨の傷跡が少しでも早く復興できることを願っています。