高知の方言の特徴は?土佐弁以外にも種類がある?
高知の方言の特徴
高知県の方言は東西で大きく異なることが特徴です。
快活でハキハキとした印象がある東部の「土佐弁」と温和で柔らかい印象のある西部の「幡多弁」です。
高知方言のアクセント
「土佐弁」は「京阪式アクセント(ざっくり関西弁的なアクセントだとお考えください)」で「幡多弁」は「東京式アクセント(標準語的なアクセントを含んでいるアクセント)」です。
土佐弁は関東の方には関西弁に聞こえるかもしれませんが、実際には全然違う言葉遣いです。
ぜひこの記事で高知の方言を覚えてみてください。
土佐弁の時制
土佐弁は時制文法に特徴があり、完了時制と進行時制が存在すると言われています。
例えば、「雨が降っていますか」と聞いた際にはふた通りの返答が返ってくる可能性があります。
- 「雨が降っちゅう」
- 「雨が降りゆう」
無理やり標準語訳すれば、前者は「ちょっと前から降っていて、今も降っている」時、後者は「(さっきまでどうかは知らないけど、)今まさに降っている」となるでしょう。
〜ぜよ
高知の出身の幕末の志士、坂本龍馬が言っていそうな「〜ぜよ」という語尾は、今はいう人はほとんどいません。
代わりに「〜やき」や「〜やけん」という言い方をします。
高知の方言の種類
先述しましたが、高知の方言は大きく分けて東の土佐弁と西の幡多弁に分かれます。
土佐弁は徳島や関西地方の、幡多弁は愛媛や九州地方言葉遣いの流れを汲んでいます。
基本的には似た方言なのですが、時と場合によっては全く言っている事がわからないこともあります。
そのため、高知県の人は初対面でも方言でだいたいどのあたりの人かわかったりします。
高知県民がよく使う土佐弁・幡多弁の定番フレーズ12選
先述の通り、高知県は地方によって方言が若干異なります。
そのため、地区によっては違う言い方をするかもしれません。
その点をご了承ください。
さて、今回紹介するフレーズはこちらです。
- おきゃく
- 献杯・返杯
- こじゃんと
- ざまに
- いごっそう
- はちきん
- なんちゃない
- ざんじ
- ひいとい
- ごくどう
- のうが悪い
- 〜にゃー
詳しくご紹介していきます。
1:おきゃく
高知といえば何は無くともまずはこれ!
「おきゃく」とは宴会の方言です。
土佐といえば酒豪、酒豪といえば宴会、宴会といえば大義名分が必要。
ということでお酒を飲む理由づけとして「お客さんが来たから宴会を開こう」「そうしよう」というところから、宴会のことを「おきゃく」というようになりました。
高知県民にとって飲み会はただ飲んで食べてをするだけでなく、他人との交流の場であるといえます。
一時期流行った「飲みニケーション」。
現在ではアルハラになるということでその言葉自体廃れていますが、高知の人は「飲みニケーション」を地で行く県民性であります。
特に、「返杯(下項目で解説します)」に巻き込まれそうになったら、お酒の弱い人はそれとなくその場を離れましょう。
2:献杯・返杯
高知の宴会を知ったなら合わせて覚えておきたい言葉です。
献杯とは目下の人が目上の人に盃を差し出し、目下の人が目上の人に酒を注ぐことで、返杯は返杯を受けた目上の人が、目下の人に盃を返し、酒を注ぐことです。
盃を差し出すことを一般に「盃を差す」と言います。
なので献杯・返杯をしている人は「差し合いをしている」と言ったりします。
お酒が強い人には楽しい文化なのですが、弱い人にはおすすめしません。
差し合いが始まったらそれとなくその場を離れるのが吉でしょう。
また、最近では、差し合いを断っても本気で怒られることは少なくなりましたので、もし勧められたら正直にお酒がよわい旨を伝え、1往復程度お付き合いすれば角が立たずにやり過ごせるでしょう。
高知県は熱燗の文化なので、冷酒よりはアルコールが飛んでいます。
少しは飲めるという方は体験してみると面白いでしょう。
3:こじゃんと〜
汎用性の高いのがこちらのこじゃんと。
すごくという意味です。
幡多の方では沢山という意味でも使われます。
使い方は
「外出るが?こじゃんとひゃいがに」(外に出るの?すごく寒いのに)
「こじゃんとサワチ構えちゅうきね!」(沢山サワチ料理用意したからね!)
の様になります。
語源はしゃんとするの「しゃん」に「小」が接頭し「こしゃんと」(こぎれいな)となり、紆余曲折あって、プラスの感情を広義に表す言葉となったものと考えられます。
4:ざまに
幡多の方言ですごいを表します。
土佐の「こじゃんと」に似た意味です。
使い方は
「昨日のおきゃくはざまに飲んだちやー」
(昨日の宴会はすごく飲んだよー)
の様になります。
ちなみに、幡多の最西端にある宿毛市のお酒に「ざまに」という芋焼酎があります。
こちらざまに美味しい商品でございます。
5:いごっそう
高知の頑固者、筋の通った男を指して使う言葉です。
日本三大頑固(津軽じょっぱり、肥後もっこす)のひとつと言われています。
『県民性 - 文化人類学的考察』(祖父江孝男著)において、この「いごっそう体質」が過激な尊王攘夷運動につながったと評されるほどの頑固一徹。
良い意味でも悪い意味でも使われますが、本人が自称するときはいい意味で使っていますので、褒めてあげると喜びます。
大変素直なところも特徴です。
「おまんはまっこといごっそうじゃのう」
(あなたは本当に頑固者・筋が通った人だね)
の様に使います。
6:はちきん
こちらは「いごっそう」の女性版と言えるでしょう。
とにかく馬力のある女性に使う言葉です。
男に2つしかない「きん」を8つも持っているほどにパワフルな女性をはちきん(=8金)と言います。
昔は女性蔑視は全国的にみられましたが、特に西日本はその機運が強く、宴会などではお酒や料理を食べることが許されず、常に給仕の仕事に徹底していました。
しかし、高知のはちきんはそんなこと御構い無しに飲んで食ってと宴会に参加していた様です。
高知の女性は宴会だけではなく、普段の生活においても「(いわゆる)男顔負け」の活躍を見せていたのでしょう。
ただし、こちらも良い意味でも悪い意味でも使いますので、使うときは時と場合をよく考えて注意して使いましょう。
下の例文では…どちらの意味でしょうか。
「おらんくの女房はいよいよはちきんじゃー」
(私の嫁さんはとても気が強い女性ですよ)
7:なんちゃ(ない)
こちらも高知の県民性をよく表しているフレーズです。
「なんちゃない」はなんてことないという意味です。
「飲み会の予約忘れてました!すみません」
「なんちゃー。うちんくでのんだらいいけん!」
ちょっとした失敗なら「なんちゃ」といって流してくれます。
これを言われるとホッとしますね。
また、呼応の副詞として、「なんちゃ〜否定語(「ない」等)」の形でも使います。
「なんちゃ心配せんでも大丈夫やけん」(全然心配しなくても大丈夫だから)
8:ざんじ
標準語と違う意味として使われますので注意が必要です。
標準語で暫時といえば「しばらくの間」という意味ですが、高知では「すぐに」という意味になります。
ですので、上司の方は
「この書類入力しておいて」
「ざんじやります!」
と言われたら、「しばらく放っておいてからやります」ではなく、「すぐにやります」という意味ですので、怒らないであげてください。
9:ひいとい
一日とかいてひいといと読みます。
こちらは漢字の通り1日(で)という意味です。
高知は魚介類が美味しいことで有名ですが、一夜干しなどは最高の酒のつまみになります。
一夜干しは高知では「ひいといぼし」と言われます。
また、2〜3日かかりそうな仕事でも仲が良ければ
「ひいといでやっちゃるで!」
(1日でやってあげるよ!)
と請け負ってくれます。
さすがいごっそうの国ですね。
10:ごくどう
語源は同じなのかもしれませんが、頬にバッテン傷がある人のことではありません。
高知では怠け者、怠惰という意味で使われます。
こちらも県外の人が聞いたら勘違いしてしまいますね。
こたつから出ないでリモコンを探していたら、
「そげなごくどうなことせられんで!」(そんな怠け者みたいなこしたらダメだよ!)
などと言われたらとても悪いことをした気持ちになってしまいますね。
11:のうが悪い
悪口ではありません。
「脳が悪い」ではなくおそらく「能が悪い」だと考えられます。
「能」は漢文では「能う」と書いて「あたう」と読み「〜をすることができる」もしくは、「能く」と書いて「よく」と読み「上手に」という意味でも使われます。
名詞では「効果がある」という意味になります。
上手くいかないという意味で「不便だ」、効果がないという意味で「使いがってが悪い」のような意味になります。
「体調が優れない」時に使う人もいるようです。
標準語では広義で「(人・もの・状況の)具合が悪い」という意味で理解するといいかもしれません。
ちなみに、幡多弁では「じゅうが悪い(じゅんが悪い)」という言い方をします。
はっきりとした語源はわかりませんが、「十が悪い=十全ではない」、「縦が悪い=自分の思い通りでない」(縦は「ほしいまま」と読んで「思い通り」の意)、「順が悪い=正しい順序でない」「自由が悪い=自由でない」などの解釈があるようです。
12:〜にゃー
幡多弁は語尾ににゃーをつけることがあります。
「今日は天気がいいにゃー」
(今日は天気がいいなー)
猫さんみたいで可愛いですね。
男しか使わないんですが。
幡多弁は語尾に特徴があります。
他にもラムちゃんのように「〜だっちゃ(がっちゃ)」という語尾や「〜ちや」という可愛らしい語尾を使います。
こちらは男女問わず使います。
高知県民が思わず使っちゃう土佐弁・幡多弁の面白フレーズ5選!
今回ご紹介するのは以下の5フレーズです。
- 待っちょっちゃうっちゆうちょっちゃって
- いっちきちもんちきち
- たっすいがはいかん
- おっとろしぁー!
- 熱燗をちんちんにまけまけいっぱいで!
ではそれぞれ詳しく見ていきます。
1:待っちょっちゃうっちゆうちょっちゃって
意味を理解している県民にとっては日常のフレーズですが、文字に起こすと舌を噛みそうな字面ですね。
他の四国の県民にいじられる時に持ち出されたりします。(悪意はない)
「待っちょっちゃう」は「待っててあげる」で、「ゆうちょっちゃって」が「言っておいてあげて」というような意味です。
標準語では「待っててあげるって言っておいてあげて」となります。
ただし、気の短い「いごっそ」もいますので、なるべく待たせないようにしましょう!
2:いっちきちもんちきち
お猿さんは関係ありません!
主に幡多弁話者が使う言葉で、「いっちきち」が「行ってきて」、「もんちきち」が「戻ってくる」という意味です。
こちらは土佐弁話者が幡多弁話者をいじる時によく持ち出されます。(悪意はない)
繋げると、「行ってきて戻ってくる」という意味です。
「ざんじいっちきちもんちきち」
(すぐに行ってきて戻ってきて)
このような柔らかい言い回しが幡多弁の柔和な雰囲気を醸し出しています。
3:たっすいがはいかん
アサヒビールが高知県で宣伝文句としてよく使う言葉です。
高知県はビールの消費量が東京・沖縄に次いで第3位で、発泡酒の消費量に関しては日本一です。
高知のおんちゃん(おじさん)たちは間断なく酒を豪快に飲み続け、一日中酔っ払っていることもあります。
4〜5人で飲み屋に行ってとりあえずビール10杯なんてことも。
象徴的なのは高知市の真ん中にあるひろめ市場という複合大衆居酒屋です。
70程度の飲み屋、ご飯屋、ショップなどが軒を連ね、朝8時から夜11時まで営業しています。
昼間からお酒を飲んでも、高知の人なら許してくれるでしょう。
むしろ、羨ましがられるかもしれません。
「たっすいがはいかん」はそんな高知でアサヒがビールの宣伝文句として使うフレーズです。
「たっすい」は「薄い」とか「淡い」とか「弱い」という意味で、「いかん」は「いけない」「ダメだ」という意味です。
なので、「弱のはダメだ」、殊ビールに関しては「キレがないのはダメだ」みたいな意味になります。
さすが「いごっそ」「はちきん」を育んだ高知の風土ですね。
4:おっとろしぁー!
驚いた時に発する言葉です。
夫がロシア人というわけではありません。
例えば、
「土佐文旦は東京では2つで1000円くらいするよ」
「おっとろしぁ!うちんくで買えば100円ばぁで買えるがに!」
(びっくりした!ウチのお店で買えば100円くらいで買えるのに!)
と、会話の内容にびっくりした時や運転中に動物が飛び出して来た時など単純にびっくりした時に使われます。
中国語の「アイヤー」に近いかもしれません。
また、愛媛南部では「おとろし」は「恐ろしい」という意味で使われますので、こちらの流れをくむ方言でしょう。
5:熱燗をちんちんにまけまけいっぱいで!
決していやらしい意味ではありませんよ。
ちんちんは熱々、まけまけいっぱいは溢れるほどいっぱいなので「熱燗を熱々なみなみいっぱいで!」という意味です。
「熱燗はちんちんまけまけ」という番組がFM高知で熱燗ドラゴンという高知のお笑い芸人さんによってオンエアされています。
そちらも良ければお聞きください。
【番外編】土佐弁・幡多弁で言われたい!グッとくる告白フレーズ5選
以下の厳選5フレーズをご紹介します。
- こじゃんと好きやき
- 好いちょうよ
- 愛しちゅうよ
- わい、おまんのこと好きなが
- うち、あなたのこと、好きながっちゃ
1:こじゃんと好きやき
たくさんのすき焼きではありません。
こじゃんと=たくさん、すきやき=好きだから
「こんなに(あなたのこと)好きだから」
相手の反応を伺う告白ですね。
最後に「(付きおうて)」と繋がるのですが、あえて言葉にしません。
想いを伝えて、あとの判断はあなたに委ねられました。
2:好いちょうよ
「好きやき」と言われた時の返しとしても使えます。
「好きだよ」
という意味です。
「好きやき」
「(僕・私も)好いちゅうよ。付きおうて」
となったら幸せですね。
3:愛しちゅうよ
告白の時にも使えますし、すでに付き合っている同士で愛を確かめ合う時にも使えます。
「愛しているよ」
と自分の気持ちをストレートに伝える表現です。
4:わい、おまんのこと好きなが
かなりいぶし銀の告白です。
最近の若い子は使わなくなっているそうですが、男は自分のことを「わし、おら」相手のことを「おまん」と言うことがあります。
「私、あなたのこと好きだよ」
という感じですが、標準語にするとなぜか味気なく感じますね。
5:うち、あなたのこと、好きながっちゃ
最後は幡多弁での告白です。
「私、あなたのこと、好きなんです」
という感じです。
方言の魅力は感情を表現する言葉の選択肢が多い点にあります。
同じ言葉を伝えるにもたくさんの表現ができるのは便利でとても素敵ですね。
【番外編】高知県出身の芸能人や高知で撮影された土佐弁・幡多弁の映画やドラマ
高知県出身の有名人で真っ先に出てくるのが広末涼子さんです。
ドラマや歌など、マルチに活躍されていますね。
また、幡多出身で有名なのが間寛平さんです。
言わずと知れたお笑い芸人の大御所です。
最近ではアースマラソンで世界中の注目を集めました。
高知を舞台にしたドラマで一番知名度が高いのはやはり福山雅治さん主演の龍馬伝です。
高知県に与えた経済効果はいうまでもありません。
生田斗真さん主演の遅咲きのひまわりも高知県の幡多郡で撮影されたドラマです。
県内の認知度はかなりのものです。
また、隠れた名作として名高いジブリアニメ作品海がきこえるの舞台にもなりました。
“高知の方言は何種類?高知弁の特徴や定番フレーズを紹介!【かわいい/告白フレーズ/映画やドラマ】”まとめ
よく使う表現から、面白い表現、告白のフレーズを厳選して紹介しました。
東のチャキチャキの方言も、西の柔和な方言も話者の性格を表しているように魅力的です。
特に語尾は独特で、実際に聞きに行くのも楽しいでしょう。
また、お酒に関する文化も独特で、盃を介して初対面の人でもすぐに打ち解けられる風土があります。
西日本にしては珍しく、昔から女性が活躍できる土壌があったことも特筆すべき点です。
そんな、いごっそ、はちきんの国でおきゃくになってみるのも楽しいかもしれません。
こちらの記事で高知の方言を知って、参考にして旅に出ていただけたら幸いです。