島根の方言の特徴は?島根弁以外にも種類がある?
島根の方言の特徴
島根県の方言の特徴にはどのようなものがあるのでしょうか。
そもそも、実は島根弁と呼ばれる方言はありません。
島根県は東西に細長く、東部の「出雲弁」と西部の「石見(いわみ)弁」、そして離島である隠岐の島で使われる「隠岐弁」といった三種類の方言に分けられます。
不思議なことに出雲弁のイントネーションは東北地方の方言である「ずーずー弁」に近く、石見弁は山を隔てて隣り合う広島県の方言、広島弁と通じるところがあるそう。
隠岐弁は離島ゆえに独自のイントネーションやアクセントが使われており、4つの島からなる隠岐地方では島ごとに異なる単語もあるとのことです。
共通的な語尾として「~さい」や「~けえ」があり、柔らかい口調に聞こえるという特徴があります。
島根の方言の種類
前述したように、島根の方言は3つに分類することが出来ます。
「出雲弁」は出雲大社でよく知られている出雲市や、隣接する松江市などの県東部で使われており、日本書紀などに出てくる『古代日本語』という言語を継承しているといわれています。
「石見弁」は県西部に位置する浜田市や益田市、三瓶山(さんべさん)という国立公園に指定された火山を有する大田市を中心に使用。
広島県や山口県でも使われている「~だけぇ」「~じゃけぇ」という語尾の方言です。
「隠岐弁」はその名前の通り隠岐諸島で使われる方言の総称。
隠岐諸島は隠岐の島をはじめとした4つの島があるため、それぞれの島で細かなニュアンスが異なることもあるそうです。
出雲弁と隠岐弁は「雲伯(うんぱく)方言」という島根県東部から鳥取県西部にかけての地域で使われる方言に分類されており、ラ行脱落といって、「誰が・だーが」のようにラ行の子音が長音になりやすい特徴を持つとのこと。
これに対し石見弁は広島弁と同じ「西中国方言」と分類されており、上記のようなラ行脱落は見られないという差が生まれています。
また、今回は便宜上出雲・石見で共通して使われる方言について島根弁と表記し、解説をすすめます。
島根県民がよく使う島根弁の定番フレーズ12選
①:だんだん
島根弁の定番フレーズ1つ目の「だんだん」とは標準語で「ありがとう」という意味です。
NHKの連続テレビ小説「だんだん」で一躍全国区となった方言。
しかしこのフレーズは島根弁のうち「出雲弁」に分類され、石見地方ではほとんど使われていない方言です。
漢字では段々と表記し、重ね重ねという意味を持っており「だんだんありがとう」というような使われ方をしていたそう。
これが省略され、頭の「だんだん」だけで感謝の意を伝えるようになったといわれています。
②:しわい
島根弁の定番フレーズ2つ目の「しわい」とは標準語で「つらい・しんどい」という意味を表しています。
「1日仕事をしてしわいねぇ」という使われ方で耳にすることが多い方言。
島根県全体で使用されていますが、西側の一部地域では「噛み切れないほど固いもの」にもしわいという単語を使う地域も有るようです。
例えば、固いお肉を食べた時などに「この肉はしわい」というような使い方をするとのこと。
島根弁として同じ単語、同じ県でも意味が異なるのは面白いです。
地域差があるため、文脈によって聞き分ける必要があるので注意が必要ですね。
③:こまい
島根弁の定番フレーズ3つ目の「こまい」とは、標準語で「細かい・小さい」を表す方言です。
島根弁のなかでも石見弁に分類されるため、島根県西部で主に使われています。
例えば新聞の文字を指して「こまい字」というように表現します。
こまいとはっきりと発音する人も居れば、後に続く音によっては「こまー」と長音になることも。
例えば「小さな頃」が「こまー時(とき)」という発音になるのです。
「細かい」が元になっているため、比較的意味の分かりやすい方言ですね。
④:いかい
島根弁の定番フレーズ4つ目の「いかい」とは、こまいの対義語で「大きい」という意味の方言。
こちらも島根県西部、特に浜田市のあたりでよく使われている言葉だそうです。
「いかい魚」で「大きな魚」という意味になり、知らずに聞くと意味の予想がつきづらい方言ですよね。
こまいとセットにして覚えておくのがおすすめです。
「こまい・いかい」は共に出雲地方ではほとんど使われていませんので、通じない場合があるかもしれません。
意味だけでなく、方言の使用されている地域も合わせて覚えておくようにしておきましょう。
⑤:めげる
島根弁の定番フレーズ5つ目の「めげる」とは「壊れる」という意味の単語で、出雲・石見共通の方言となっています。
「時計がめげた」や「おもちゃがめげるから大事に扱いなさい」というような使い方をされていて、島根の方言の中でもよく耳にするフレーズ。
めげる、めげた、めぐ、など語尾の変化がありますが、どれも「壊れる、壊れた、壊す」と対応した活用法なので使いやすい方言でもあります。
逆に、島根弁の中でも活用法が多いため聞き取り方によっては気付きにくいという難点も。
気落ちするという意味ではないので、勘違いしないように前後の言葉を注意して聞くようにするのがおすすめです。
⑥:なして
島根弁の定番フレーズ6つ目の「なして」とは「どうして」という意味をもつ方言。
動画のように「どうして~のように」を「なして~のように」というような表現に使用します。
こちらもめげる同様、出雲弁・石見弁で共通の『島根弁』です。
何故、どうしてといった疑問文の始まりに来ることが多いので、知らなくともなんとなく意味の通じる方言でもあります。
島根県で頻繁に耳にする方言で、使っている人の年齢も幅広くなっているのが特徴です。
⑦:そがぁに・そげに
島根弁の定番フレーズ7つ目の「そがぁに・そげに」とは「そんなに」という意味の方言。
石見弁では「そがぁに」を使い、出雲弁では「そげに」を使うというように分かれています。
どちらも語尾の変化が豊富で、「そがぁな・そげな」や「そがんこと・そげんこと」と文脈によって多彩な変化を見せるのが特徴です。
例えば「そげに荷物があっちゃあしわいでしょう」で「そんなに荷物があったらしんどいでしょう」という意味に。
応用範囲が広いので、島根弁のなかでも使い勝手の良い方言として親しまれています。
⑧:がいな
島根弁の定番フレーズ8つ目の「がいな」とは出雲弁で「強い、立派な」という意味を表しています。
出雲地方だけでなく鳥取県西部でも共通して使われており、「雲伯方言」に分類。
鳥取県の米子では「米子がいな祭」という行事も行われており、島根でも使われる方言という認識が薄くなっている傾向もみられます。
また、同じ島根県でも石見地方では「がいな」という言葉は使われていません。
アニメ製作会社「ガイナックス」の社名の由来にもなっているため、聞いたことのある方も多いかもしれませんね。
⑨:きんさい
島根弁の定番フレーズ9つ目の「きんさい」とは「来てください」という少し丁寧な意味の方言。
きんさい、きんちゃいというように語尾に変化が見られますが、伝えたいニュアンスに変わりはありません。
「きんさい」は島根弁のうち石見弁に分類され、出雲弁では「くるだわね」という言葉になります。
島根県内での表現もこれだけ異なるのですから方言は奥深いものですよね。
この方言は「きんさい、きんさった、くるだわね、くーだわ」というように話し言葉の中で語尾が変化していくため聞き逃さないよう注意しましょう。
⑩:やれん
島根弁の定番フレーズ10つ目の「やれん」とは「できない・こまった」というニュアンスで使われる方言です。
出雲弁、石見弁で共通的に使われる島根弁の一種。
「~がやれん」「~じゃけ、やれんわ」というように会話中で使用されます。
出来ない、という意味の他にも同様のニュアンスとして「叶わない」という意味も含まれているので、「そげな夢はやれん」というような使われ方も。
汎用性の高い島根弁として覚えておくと役に立つかもしれません。
⑪:おぞい
島根弁の定番フレーズ11つ目の「おぞい」とは「恐ろしい」という意味の方言。
出雲弁・石見弁ともに使われる島根弁で、おぞい、おぞげなという活用をみせます。
出雲地方では「やれおぜな!」(なんと恐ろしい!)という注意喚起の交通看板も見られるほどポピュラーな方言。
「怖かった」は「おぞかった」となるように、語尾の変化は標準語に対応しているため使いやすい、また聞き取りやすい島根弁となっています。
⑫:こんげん
島根弁の定番フレーズ12つ目の「こんげん」とは「決して・これっきり」という意味の方言です。
出雲・石見どちらの方言としても使用されている島根弁ですが、若い年代の方はあまり使っていないようです。
また、こんげんには「最後」というニュアンスが含まれており「それっきり」や「すっかり~ない」のような打消しの文脈で使用されます。
こんげんの持つニュアンスは多く、文脈や前後の発言に応じて聞き手が判断する必要がある島根弁となっています。
島根県民が思わず使っちゃう島根弁の面白フレーズ5選!
①:はぶてる
島根弁の面白フレーズ1つ目の「はぶてる」とは、動画の通り「拗ねる」という意味の方言です。
島根弁のなかでも島根県西部の石見弁に分類され、石見弁を含む西中国方言のため動画の広島弁でも同様のニュアンスで使用されています。
そのため、出雲地方でははぶてるはほとんど使われておらず、通じない場合も多いよう。
拗ねるという言葉の原型が全くなく、意味を理解していないと何のことを言っているのかさっぱり分からないですよね。
方言の面白さを感じられる単語ではないでしょうか。
②:はいごん
島根弁の面白フレーズ2つ目の「はいごん」とは出雲弁で「騒ぐ」といった意味の方言。
「大はいごん」では「大騒ぎ」という意味になります。
例えば「子どもが階段から落ちて大はいごんじゃった」なら「子どもが階段から落ちて大騒ぎになった」という事に。
はじめに書いたとおり、はいごんは島根弁の中でも出雲弁に分類されますので島根県西部の石見弁地方では通じない場合があります。
そして、はいごんはどちらかというと「騒ぎになって焦っている」シーンでよく使われます。
はいごんという方言が聞こえてきたら、何かアクシデントがあったと思ってもいいかもしれませんね。
③:もむない
島根弁の面白フレーズ3つ目の「もむない」は、島根弁のなかでも島根県浜田地方を中心とした石見弁で「美味しくない・まずい」という意味をもっています。
料理を食べて「これはもむないねぇ」というような使い方をするそう。
もむないという方言は石見弁の他にも存在しており、和歌山弁でもまずいという意味を持っています。
離れた地域であるにも関わらず、同じ意味を持つ方言が使われているのは面白いですよね。
また、石見弁ですので出雲や松江といった島根県東部ではもむないという表現は使われていないのも興味深い点ではないでしょうか。
④:ぼいしゃげる
島根弁の面白フレーズ4つ目の「ぼいしゃげる」または「ぼいちゃげる」とは出雲弁で「追いかける」という意味の方言。
石見地方では使われておらず、独特な言い回しがユニークに聞こえる方言です。
「逃げた猫をぼいしゃげてった」という風に使い、特に勢いをもって追いかけていく様を表すときに使うんだそう。
中には「追いかける」と「ぼいしゃげる」を使い分けている人もいるそうです。
⑤:いんぐりもんぐり
島根弁の面白フレーズ最後に紹介するのは「いんぐりもんぐり」という方言。
いんぐりもんぐりは島根弁のうち、石見弁に分類され「優柔不断」というニュアンスで使用されています。
「あん人はいんぐりもんぐりじゃけ~」といったように使い、元々は「うねうねとくねっている様」を表していたそう。
優柔不断な人が、くねくねと悩む様を重ねて使われるようになったというわけですね。
どの島根弁(出雲弁・石見弁)も独特の言い回しがユニーク。
ぜひひとつ、覚えてみてくださいね。
【番外編】島根弁で言われたい!グッとくる告白フレーズ5選
①:大好きだけん
島根弁を使った告白フレーズ1つ目は「大好きだけん」です。
出雲・石見共通の“島根弁”の語尾は「~だけん」となることが多く、シンプルな「大好きだよ」という言葉も島根弁になると「大好きだけん」と変化。
ちょっとした訛りが可愛さを強調してくれますよね。
基本的には島根県全域で使用される方言ですが、西の方へ行くと「大好きじゃけん」と訛り方が変化する場合もあります。
②:好きんなっちょーたけん、付きおうて
島根弁を使った告白フレーズ2つ目は「好きんなっちょーたけん、付きおうて」です。
標準語にすると「好きになってしまったから、付き合って」といったニュアンス。
この言い回しも島根県全域で使われる島根弁となっており、県内での出身地を問わず通じるため使いやすい告白フレーズとなっています。
「なっちょー」という長音の入るフレーズは耳に柔らかく聞こえ、可愛く感じさせる効果もバツグン。
言う側も言われた側も、ほっこりしそうな方言のフレーズではないでしょうか。
③:好きだに
島根弁を使った告白フレーズ3つ目は「好きだに」です。
標準語で言うなら「好きだよ」というシンプルな言葉ですが、~だにという語尾によって純朴さが強調され、可愛らしく聞こえます。
また、だにという語尾を使うのは島根弁の中でも主に出雲弁。
石見弁を使う西部では~だに、という語尾をつけることは少ないそうです。
出雲・松江周辺で聞くことが出来る可愛らしい方言の告白フレーズというわけですね。
④:こがなこと言うんははちかしいけど、君の事好いとうけんね
島根弁を使った告白フレーズ4つ目は「こがなこと言うんははちかしいけど、君の事好いとうけんね」です。
標準語では「こんなことを言うのは恥ずかしいけど、君の事好きだからね」というニュアンスに。
「恥ずかしい」を「はちかしい」というように発音するのが可愛いと注目。
上記のフレーズは島根弁のうち、石見弁を使っており、同じフレーズを出雲弁にすると「こげなこと言うんは恥ずかしいけど、君の事好いとうけんね」となります。
島根弁としての差はほとんどないのですが、石見弁では「こがな」、出雲弁では「こげな」となるところがポイントです。
⑤:ぶち好いちょるけん、私じゃいけんかね?
島根弁を使った告白フレーズ、最後に紹介するのは「ぶち好いちょるけん、私じゃいけんかね?」です。
標準語にすると「とても好きだから、私じゃ駄目ですか?」というニュアンスになります。
ぶちとは「とても・すごく」という意味で、石見弁の地域の中でもより西側となる益田市や津和野町のあたりで使用されている方言。
より広島・山口に近いため、影響を受けていることが感じられる言い回しです。
~しちょるという表現は島根弁共通のもの。
好きだという気持ちを強調した、きゅんとくる島根弁告白フレーズではないでしょうか。
【番外編】島根県出身の芸能人や島根で撮影された島根弁の映画やドラマ
島根県出身の芸能人には、女優の江角マキコさんや俳優の渡哲也さんが居ます。
人気お笑い芸人「ニッチェ」の江上敬子さんも島根県出身。
また、島根を舞台とし、撮影された映画やドラマには2007年公開の映画「天然コケッコー」、同じく2007年放送のドラマ「砂時計」、さらに翌2008年の連続テレビ小説「だんだん」などがあります。
天然コケッコーでは浜田市、砂時計やだんだんでは出雲市がロケ地として使われており、観光地としても賑わいを見せています。
どれも豊かな自然やのどかな風景で癒されるのはもちろんのこと、各種方言である島根弁も使われているのでぜひご覧になってみてくださいね。
島根の方言は何種類?島根弁の特徴や定番フレーズを紹介!【かわいい/告白フレーズ/映画やドラマ】のまとめ
島根の方言の種類がおおよそ3種類に分けられることや、島根弁独特の特徴を知ることで「島根県」の人々との付き合いをより深くすることが出来るのではないでしょうか。
仲良くなるためには共通の話題があるほうがいいですよね。
島根弁の定番フレーズを覚えておけば、きっと役に立つことがあるかと思います。
また、映画やドラマのロケ地は話題にもぴったり。
会話を弾ませるためにも、今回紹介しきれなかったロケ地など、色々チェックしてみてくださいね。