長野の方言の特徴は?長野弁以外にも種類がある?
長野の方言(長野弁)の特徴
長野弁、もしくは信州弁は、他県の人に知られていないものも多いですが、実は特徴的で魅力的な方言が沢山あります。
大きく4つの特長を以下にまとめました。
- 県民自身が方言を方言と知らずに使っている。
- イントネーションにおいて、言葉の語頭が高く発音する。
- ~するしない。
- 語尾に"だ"を付ける。
まず一つ目の特長ですが、大きな特徴として、驚くことに、長野県民自身、それが方言だと知らずに使っている場合が多いと言われています。
他県の人は、この事実にびっくりするのではないでしょうか。
先に述べましたが、長野県は近隣県の影響を受けている為、方言も多種多様です。
実に、群馬県・埼玉県・山梨県・静岡県・愛知県・岐阜県・富山県・新潟県の8つの件と隣接しています。
北信、南信、中信の各地域が、隣接する県それぞれの文化や方言の影響を受け、同じ県内でも地域ごとに育まれた方言もまた異なります。
その為、同じ県内の人同士でも、北信と南信の人が方言で話をすると、何を話しているのかお互いに理解できないということが実際あるようです。
二つ目は、長野弁はイントネーションが標準語と異なるところも大きな特徴の一つと言えます。
例えば、イチゴ、半袖、服という言葉の場合、イチゴの”イ”、半袖の”は”、服の""ふの文字にアクセントがくるなど、語頭が高くなる傾向があります。
県外の人が初めて聞いたら、一瞬何を話しているのか困ってしまうかもしれません。
また、三つめの特長ですが、~するしない?という大変独特の方言があります。
この~するしない?はテレビやラジオなどで耳にしたことがあるのではないでしょうか。
~するしない?という方言は、~しようよ、という物事に誘う表現です。
するのかしないのかどっちなのか戸惑ってしまいそうです。
ただし、この方言は主に北信で使われる方言なので、南信の人にこのような表現をしても通じないことがあるようです。
最後に、語尾につく特徴的な方言の一つに、~だ?という表現があります。
例えば、「今日、図書館行くだ?」という風に使い、これは、今日図書館に行くの?という意味になります。
今日図書館に行くぞ、という強い断定の意味に捉えれてしまいそうです。
以上のように、長野県には興味深い方言が沢山あることがわかります。
まだまだ長野弁には奥深い方言がたくさんあるので、さらに詳しくご紹介させて頂きます。
長野の方言(長野弁)の種類
長野県は大きく分けて北信、中信、南信とに分類されます。
方言に関しても、全域で使われるものと、各地域の中だけで使われるものとがあります。
次の章で紹介するフレーズでは、どの地域で使われる方言かも説明させて頂きます。
長野県民がよく使う長野弁の定番フレーズ12選
こちらの章では、以下の12のフレーズについてご紹介します。
- ずく
- ごしたい
- みぐさい
- 飛ぶ
- ごむせー
- べちゃる
- しみる
- なから
- こわい
- べと
- ぼける
- くれる
①:ずく(全域)
「根気」「やる気」「根性」「辛抱強さ」を表現した方言ですが、このずくに関しては、標準語ではちょうどあてはまる言葉が無いんです。
標準語では当てはまらない、微妙なニュアンスを持っているということが、なんとも方言らしいと言えます。
おそらく、このずくは一番有名な長野弁ではないでしょうか。
主に、ずくなしという言い方で、やらなくてはいけないことを後回しにする人、面倒くさがりな人、というニュアンスで使われます。
例:「雪かきもしないでこたつに入ってばっかり。本当にうちの息子はずくなしだよ。」
意味:「雪かきもしないでこたつに入ってばっかり。本当にうちの息子は根気がないよ。」
例:「おやつを食べたらずく出して受験勉強がんばりなさい。」
意味:「おやつを食べたら根性出して受験勉強がんばりなさい。」
②:ごしたい(南信)
「疲れた」「めんどくさい」の意味で使われます。
年配の方は、ごしてえ、という言い方をします。
例:「今日は庭の草むしりしたからごしたい。」
意味:「今日は庭の草むしをしたから疲れた。」
例:「こんな寒い朝は雪かきがごしてえなあ。」
意味:「こんな寒い朝は雪かきがめんどくさいなあ。」
③:みぐさい(全域)
「見苦しい」「見た目が悪い」「酷い」の意味で使われます。
例:「この年でこんな衣装着るなんてみぐさいよねえ。」
意味:「この年でこんな衣装着るなんてみっともないよねえ。」
④:飛ぶ(北信、中信)
「走る」の意味で使われます。
標準語にも飛ぶという言葉あるので、この方言を知らない人が聞いたら混乱してしまうかもしれません。
例:「すぐに飛んできなさい。」
意味:「すぐに走ってきなさい。」
⑤:ごむせー(北信、南信)
「汚い」の意味で使われます。
例:「ごむせー車だなあ。」
意味:「汚い車だなあ。」
⑥:べちゃる(主に南信)
「捨てる」の意味で使われます。
べちゃくちゃしゃべると混同してしまいそうですが、捨てるの意味で使われます。
例:「そこのごみべちゃっといて。」
意味:「そこのごみ捨てといて。」
⑦:しみる(全域)
「冷える」「寒い」の意味で使われます。
標準語のしみると似ていますが、標準語の染みるではなく、凍みるの字を使います。
また、凍みるは頭にアクセントが来ますが、長野弁の凍みるは"み"にアクセントが来ます。
例:「今年の冬は特にしみるね~。」
意味:「今年の冬は特に冷え込むね~。」
⑧:なから(北信、中信)
「だいたい」「おおよそ」の意味で使われます。
例:「あんたの言いたいことはこれでなから合ってるよね?」
意味:「あんたの言いたいことはこれでだいたい合ってるよね?」
⑨:こわい(北信)
「硬い」の意味で使われます。
標準語の怖いと混同されてしまうかもしれませんが、長野弁では強いの字を用います。
硬いことをこわいという表現は、おこわという言葉の中にも息づいていると言えます。
例:「この栗はこわくて食べられたもんじゃないね。」
意味:「この栗は硬くて食べられたもんじゃないね。」
⑩:べと(全域)
「土」の意味で使われます。
べどとも言われます。
土のことをべとというのは、新潟県をはじめ、他県の方言でも見られます。
例:「日が暮れる前にべとに水やっといて。」
意味:「日が暮れる前に土に水やっといて。」
⑪:ぼける(北信)
(主にリンゴが)「柔らかくなりすぎる」「軟化する」の意味で使われます。
みずみずしいりんごが、時間が経ちすぎて中身がすかすかになって美味しくなくなってしまうことを表現しています。
りんごが名産の長野県ならではの方言と言えます。
例:「このりんごもうぼけていておいしくないね。」
意味:「このりんごはもう柔らかくなりすぎていておいしくないね。」
⑫:くれる(南信)
「(物を)あげる」「くれてやる」の意味で使われます。
もちろん一般的な、渡す、という意味でもくれるは使われます。
つまり、あげるももらうもくれるで通じてしまいます。
例:「そこの花壇にも水くれといて。」
意味:「そこの花壇にも水あげといて。」
例:「この絵本もう読まないからあなたにくれる。」
意味:「この絵本もう読まないからあなたにあげる。」
長野県民が思わず使っちゃう長野弁の面白フレーズ5選!
こちらの章では、長野県民が普段日常で使用している方言のフレーズの中で、他県の人が聞いたらくすっと笑ってしまいそうなフレーズを5つご紹介します。
- ~するしない
- かんじる
- いただきました
- ~ず
- おらっち
①:~するしない?
「~しよう。」「~しませんか?」の意味。
知らない人が言われたら、するのかしないのかどっちなの?と困ってしまうような表現です。
例:「今日買い物行くしない?」
意味:「今日買い物行こうよ?」
例:「そろそろ宿題するしない?」
意味:「そろそろ宿題しない?」
県外の人がこう言われたら、行くのか行かないのかはっきりして!宿題やるのやらないのどっち?と思ってしまいそうです。
②:かんじる
「とても寒い」の意味。感じる、ではなくて、寒じるという字を用います。
また、かんじる、と表現する時は、指先がかじかんだり、身体の一部のみが冷えた場合には使わず、体全体に対してのみ使われます。
さらに、「しみる」が物理的低温をさすのに対し、こちらの「寒じる」は体感温度の低さを指します。
例:「今年の冬は特にかんじるね~。」
意味:「今年の冬は特に体にこたえる寒さだね~。」
一体何を感じるんだろうと疑問に思われてしまうかもしれません。
③:いただきました
「ごちそうさま」の意味。長野県の給食終了の時間では、子供は、いただきました、と言うそうです。
給食を食べ始める時の「いただきます」に対応させた表現だと言われています。
例:「皆さん、いただきましたの挨拶は?」「いただきました!」
意味:「皆さん、ごちそうさまの挨拶は?」「ごちそうさまでした!」
④:~ず
こちらは、強い肯定の意味で使われます。
この方言も、否定なのか肯定なのか混同されそうな方言です。
例:「今日こそ受験勉強始めず!」
意味:「今日こそ受験勉強始めるぞ!」
思わず、早く始めなさい、と怒られてしまいそうです。
でもこれは、今日こそ始めるぞ、という強い意志の表れです。
⑤:おらっち
「自分の家」の意味。こちらは何となく予想できるかもしれません。
長野県内には、おらっち、と付いた飲食店が沢山ありますが、自分の家、という意味合いで使われています。
例:「今夜おらっちで飲もうや。」
意味:「今夜僕の家で飲もうや。」
【番外編】長野弁で言われたい!グッとくる告白フレーズ5選
番外編では、長野弁で言われたら思わず心にグッとくる告白フレーズを5つご紹介します。
方言で告白されるからこそ心に響くものがあります。
- ~かや
- ~まいか
- わにる
- だもんで
- めた
①:「俺と付き合うってことでいいかや?」
意味:「俺と付き合うっていうことでいいかな?」
~かや、という方言は、~かな?という疑問を投げかける場面で使います。
疑問文の最後に付けて使います。
②:「今夜、夜景見に行きまいか?」
意味:「今夜夜景見に行こうか。」
~まいか、という方言は、~しようよ、と物事に誘う時に使う方言です。
③:「そんなにわにるなよ。」
意味:「そんなに恥ずかしがるなよ。」
わにるは、人見知りをする、照れ臭がる、という意味で使います。
赤ちゃんがお母さん以外の人に人見知りをする際にもよく用います。
④:「俺、お前のこと好きだもんで。」
意味:「俺、お前のこと好きだから。」
~だもんで、という方言は、~だから!と何かを断定するときに使います。
⑤:「君のことめた好きなんだ。」
意味:「君のことがとても好きなんだ。」
めたは、とても、すごく、ますます、好き勝手に、といった意味があります。
若い人の言い方だと、超~という方言に当てはまります。
【番外編】長野県出身の芸能人や長野で撮影された長野弁の映画やドラマ
こちらでは、長野県出身の芸能人や長野が舞台の映画やドラマをご紹介しますが、皆さん意外と思われる人が多いのではないでしょうか。
実は意外と知られていいませんが、池上彰さんは長野県松本市の出身です。
長野県は教育に力を入れていることでも有名なので、頷けるかもしれません。
また、世界的に活躍する久石譲さんも中野市の出身です。
美川憲一さんも諏訪市の出身ですが、美川さんが長野県出身というのもご存知ない方が多いのではないでしょうか。
他にも、長野県出身の芸能人には、藤森慎吾さん、鉄拳さん、島田秀平さん、もう中学生さんなど、若手芸人さんも大勢輩出しています。
さらに、名脇役として有名な田中要次さんも木曽出身の俳優さんです。
長野県が舞台の映画やドラマは沢山ありますが、記憶に新しいのは、NHK大河ドラマ「真田丸」の舞台となった上田ではないでしょうか。
戦国時代における真田幸村を主人公とする物語です。
真田信繁の父、真田昌幸によって築城された上田城は舞台の中心であり、大河ドラマで話題になった後は、歴史の地を見ようと、多くの観光客が訪れました。
その上田市と言えば、小川洋子さんの「博士の愛した数式」が撮影された場所としても有名です。
妻夫木聡さんが主演の「さよなら、クロ」は、松本深志高校で実際にあった話を基に作られた映画で、松本深志高校でも撮影が行われました。
ドラマの舞台としては、1996年に放映された「白線流し」は、松本市で撮影され、架空の松本北高校を舞台とした作品として有名です。
また、長野県は、サスペンスドラマの舞台としてよく登場します。
浅見光彦シリーズ、金田一少年の事件簿シリーズなど、多くの作品で使われています。
実際、長野県の山中という言葉を聞いて、事件の現場を連想する人は多いでしょう。
こちらで紹介した場所以外にも、舞台となった所はまだまあります。
映画やドラマの舞台を巡るのも面白いのではないでしょうか。
長野の方言は何種類?長野弁の特徴は【あいさつ/定番/かわいい/告白】のまとめ
今まで長野県の方言について沢山ご紹介しましたが、聞いたことのあるものから、初めて耳にするものまで、本当に多種多様な方言があることが分かって頂けたのではないでしょうか。
長野県独自の文化に加え、他県からの影響を多々受ける中ではぐくまれてきました。
具体的には、北信地方では新潟の方言が入り、中信・南信地方は遠州(静岡県)や尾張(岐阜県・愛知県)の上州(群馬県)の方言の影響を受けていると言われています。
こうして、多方面からの影響を受けているからこそ、標準語では表現できないような微妙な言い回しが生まれたとも言えます。
北信の方言が南信では通じない、または南信の方言が北信では通じないという事も、面積の大きな長野県だからこその特長であり、非常に興味深い事実ではないでしょうか。
また、長野県には盆地が多く、その盆地周辺の地域ごとに独自の文化が発達してきたことも、県内でも異なる方言が存在する理由の一つと言われています。
りんごがぼける、しみるなど、リンゴが名産の雪国という地理的、気候的な方言が目立つのも面白い特徴の一つと言えます。
しみる、ぼける、くれるなど、標準語と同じ語彙でありながら、イントネーションや用法が違うことで長野弁とされているものも多く、長野県の人ですら方言と知らずに使っているという事実は非常に興味深いものです。
今まで、長野の方言について述べてきましたが、方言は単なる言葉に過ぎず、その土地や人の中で時間をかけて育まれてきた文化そのものだと捉えることができるのではないでしょうか。
ただし、ご紹介してきた方言の中には、現代の若い世代には、次第に使われなくなってきたものも多々あります。
時代の流れとともに移り変わり、中には消えていくものもある。
それも方言の大きな特徴の一つと言えるのかもしれません。