山梨の方言の特徴は?甲州弁以外にも種類がある?
皆さんは山梨方言について、どんな言葉を知っていますか?
山梨方言は甲州弁とも呼ばれ、山梨県において古くから話されてきた言葉です。
全国ではあまり知られていなかった甲州弁ですが、2014年に放送されたNHK連続テレビ小説「花子とアン」で一躍有名になりましたよね。
「〜ずら」や「こぴっと」など独特な響きを持つ方言もあり、ドラマ内で登場して甲州弁が印象に残ったという人も多いのではないでしょうか。
甲州弁の中でも代表的なのが、「ほうけ(そうなんだ)」「ほうずら(そうだろう)」「ほうじゃんけ(そうだよね)」の3種類。
山梨県民なら絶対に聞いたことのある代表的なフレーズです。
甲州弁があまり使われなくなった今でも、この3種類の言葉は根強く残っています。
若い人でも一部の甲州弁が無意識に口に出ていることもあるようですよ。
山梨の方言(甲州弁)の特徴
山梨方言(甲州弁)の特徴と言えば、語頭のアクセントが強い傾向にあること。
「いちご」「たんぼ」でも頭の1文字目にアクセントが付きますし、「かつぬま」「きよさと」の地名でも同様です。
そして珍しいのが、人名のアクセント。
「よしみ」「かずみ」「しげる」などの人名では、頭にアクセントが付いた呼び方になるんです。
加えて、山梨県の市外局番である「055」も頭の「ゼロ」を強調して読むのが山梨流。
他の県ではあまり見られない特徴なのではないでしょうか。
山梨県は山に四方を囲まれた県のため、昔から風が強く吹く地域でした。
その風に声がかき消されないように、甲州弁は単語の最初を強く発音するようになったのだと言われています。
そのため標準語圏の人が聞くと、少々強めなケンカ腰の話し方に聞こえてしまうこともあるそうです。
山梨の方言(甲州弁)の種類
山梨方言(甲州弁)には大きく2つ種類があり、山梨県の西側で話される国中弁、そして山梨県の東側で話される郡内弁に分かれています。
国中弁が話されているのは、おもに山梨県の中心部に位置する甲府盆地から西の地域です。
また、郡内弁が話されているのは、東京に近い富士五湖地方の周辺となります。
より東京から遠いとあって、郡内弁より国中弁の方が方言がキツイ傾向にあります。
そのため、山梨県内でも、郡内地方に住む人が国中地方の甲州弁を理解できないこともしばしばあるようです。
山梨県民がよく使う甲州弁の定番フレーズ14選
ここからは、山梨県民がよく使う定番フレーズを14種類ご紹介していきます。
方言をよく喋る年配の方だけではなく、10代や20代の人でも話すことがあるフレーズなので、ぜひ注目してみてください。
①: 「〜しろし」
例:「ちったぁ片付けろし(ちょっとは片付けなさい)」
例:「気を付けて行けし(気を付けて行きなよ)」
「〜しろし」は、標準語では「〜しなよ」「〜した方がいいよ」といった意味になります。
そのままでは命令の意味が強い表現になっているので目上の人には使われません。
この言葉は、山梨県民の多くがついつい使ってしまう方言のひとつです。「〜しろしね」といったように、最後に「ね」を付けて柔らかい言い方をする時もあります。
②: 「〜ずら」
例:「この時間に出発すりゃあ良いずら(この時間に出発すれば良いでしょう)」
例:「だからほうって言ったずらに(だからそうだと言ったのに)」
こちらも、甲州弁の中では代表的な言葉です。
「〜ずら」は「〜だろう」という推測の意味を初め、「~だ」といった断定の意味など、さまざまなシーンで多用される語尾です。
平坦に発声する場合は基本的に断定の表現となりますが、推測表現や同意を求める時は「~ずら?」と言うこともあります。
③: 「〜じゃん」
例:「ほうじゃんねぇ(そうだよね)」
例:「早くけえるじゃん(早く帰ろう)」
「〜じゃん」は「〜だよね」「〜だなぁ」など、同調したり感嘆したりするときに発する言葉です。
「いいじゃんね(良いでしょう)」といった風に、あまり意識せず日常的に使われる言葉になります。
④: 「~け」
例:「なんで。具合でもわりぃだけ?(どうしたの。具合でも悪いの?)」
例:「こっちん来てもらってもいいけ(こっちに来てもらってもいい?)」
「〜け」はさまざまな会話の語尾につく方言のひとつ。
「ほうけ」で「そうなんだ」という納得の意味で使われることが多い言葉です。
⑤: 「~しちょ」
例:「ほんなこんしちょ(そんなことしない方が良いよ)」
例:「あんまり無理はしちょしね(あんまり無理しないでね)」
「〜しちょ」は「〜しない方が良い」という禁止の意味を持つ言葉です。
「〜しちょし」というように「し」を最後に付けると、更に念を押す禁止の言葉になります。
⑥: 「~してくりょう」
例:「ちょっと、ほこの醤油取ってくりょう(ちょっと、そこの醤油をとってちょうだい)」
例:「わりぃけんど手伝ってくりょう(悪いけど手伝って)」
「〜してくりょう」は「〜してください」という意味になります。
人によっては「〜してくりょ」という言い方にもなります。
⑦: 「てっ」
例:「てっ、見ん間に大きくなったじゃん(あら、見ない間に大きくなったね)」
例:「てててっ!(うわぁ!)」
「てっ」は、山梨県民が驚いた時に発してしまう方言です。
標準語の「わぁ」と同じように言葉単体でも良く使われますし、「てっ、すごいじゃん」というように、文章の始めに使われたりします。
さらに、「ててっ」「てててっ」のように繰り返すことで、驚きの程度を表します。
⑧: 「つこん」
例:「明日忙しいっつこん(明日は忙しいんだよ)」
例:「人手が足りんっつこんずら?(人手が足りないってことでしょ?)」
「つこん」は「ということ」という意味があり、「〜っつこんずら?」で「〜っていうことでしょ?」という意味になります。
⑨: 「いいさよぉ」
例:「わりぃじゃんね(ありがとう)」「いいさよぉ(どういたしまして)」
例:「ほんなん気にしんでいいさよぉ(そんなこと気にしないで良いんだよ)」
「いいさよぉ」は「もちろん大丈夫だよ」という意味を持つフレーズです。
基本的には、相手に何か許しを与える時に温かみを持って使われる言葉になっています。
⑩: 「かまーん」
例:「かまーんから、あがってけし(良いから、あがっていきなよ)」
例:「別になくたってかまーんずら(別になくても問題ないでしょう)」
「かまーん」は「構わん」の発音が訛った甲州弁です。
「かまーんじゃん」で「(あなたには)関係ないでしょう」や、「かまーん、かまーん」で「大丈夫、大丈夫」という意味にもなります。
⑪: 「おまん」
例:「おまんは足が速いじゃんね(あなたは足が速いんだね)」
「おまん」は「あなた」を表す言葉です。
「あなた」より砕けていて「お前」より親しみを込めているような、独自の二人称として使われます。
また、「おまんとう」で「あなたたち」という複数の人達を指す言葉になります。
⑫: 「いくじ」
例:「今いくじで?(今何時?)」
例:「このぼこはいく歳になるで?(この子は何歳になるの?)」
「いくじ」は「今いくじ?」というように使われ、「今何時?」と時間を聞く時に使われます。
この方言は時間だけでなく、「いく歳?(何歳?)」のように年齢を聞くフレーズにもなります。
⑬: 「いっさら」
例:「待てどぉ待てどぉ、いっさら来んじゃん(待っても待っても、全然来ない)」
例:「てっ、いっさら残っちゃあいんじゃん(あら、全然残ってない)」
「いっさら」は打ち消しの否定語と合わせて、「全く~ない」の意味を表す甲州弁です。
標準語で「全然~ない」の言葉を使うのと同じくらい、さまざまな場面で使われます。
⑭: 「ぶちゃる」
例:「こんな古いもん、ぶちゃっちめぇ(こんな古いもの、捨ててしまえ)」
「ぶちゃる」は「捨てる」の意味を表す言葉です。
甲州弁らしい強めの方言なので、男性が言うと少し乱暴に捨てるイメージが生まれるかもしれませんね。
山梨県民が思わず使っちゃう甲州弁の面白フレーズ7選!
ここからは、他県民が思わず驚いてしまう甲州弁の面白フレーズを7種類ご紹介していきます。
山梨県民にとっては当たり前の言葉なのですが、他県の人には絶対通じない方言をまとめてみました。
①: 「えらい」
例:「階段のぼるのがえらいじゃんね(階段のぼるのが大変だよね)」
「えらい」は標準語だと「偉い」と読んでしまいがちですが、甲州弁では「大変」や「しんどい」という意味になります。
「へぇ、えらい」は「もう、(身体が)しんどい」という意味になるのです。
また、「大変」の意味から量の多さを示す場合もあり、「えらいナスがなってるじゃんけ」で「たくさんナスがなっているね」という意味を持っています。
②: 「かじる」
例:「わりぃけんど、背中かじってくれんけ(ごめん、背中かいてくれない?)」
「かじって」は特に、甲州弁独自の言葉なのではないでしょうか。
標準語を話す人達から見るとビックリしてしまいますよね。
山梨県民が言う「背中かじって」は、決して「背中に噛みついて」という意味ではなく、「背中を掻いて」という意味になるんです。
③: 「くっつかれる」
例:「ほんなこんすると犬にくっつかれちもうよ(そんなことすると犬に噛みつかれちゃうよ)」
「くっつかれた」は「噛みつかれた」の意味になる甲州弁です。
犬などの動物だけでなく、蚊やアブなど虫に刺された場合にも「くっつかれた」という表現をします。
④: 「こぴっと」
例:「ちったぁこぴっとしろし(ちょっとはしっかりしなさい)」
「こぴっと」は「きちんと」という意味を示す言葉です。
「こぴっとしろし」で「ちゃんとしなさい」といった意味になります。
身体的にも精神的にも通じる表現で、「(身体的に)姿勢を正しなさい」や「(精神的に)前を向いてしっかりしなさい」というように使われます。
⑤: 「持ちに行く」
例:「忘れ物持ちに行ってくらぁ(忘れ物を取りに行ってくるよ)」
「持ちに行く」は標準語で「取りに行く」と同じ意味を持つ言葉です。
一見すると、忘れ物を持って、持って帰らずその場に置いてくるイメージを与えがちなので、山梨県外の人からは首を傾げられる甲州弁の筆頭です。
⑥: 「からかう」
例:「からかってみたけんど、直らんじゃん(色々やってみたけど、直らないんだよ)」
「からかう」という言葉は「冗談をいって困らせる」という意味で標準語にも存在しますが、甲州弁で言われる「からかう」には「取り掛かる」「やってみる」という意味があります。
機械などが壊れた時に、直すために色々と操作することを「からかう」と呼びます。
⑦: 「ちょびちょび」
例:「これ!ちょびちょびしちょ(こら!じっとしなさい)」
「ちょびちょび」には「調子に乗る」「落ち着きがない」という意味があります。
落ち着かず動き回る子供に対して大人が「ちょびちょびしちょ(動き回るな)」と諫める使い方をされます。
【番外編】甲州弁で言われたい!グッとくる告白フレーズ5選
方言女子という言葉がある通り、方言を話す女の子はそれだけでグッと来てしまうことがありますよね。
ここからは、告白セリフに最適なグッとくる甲州弁を5種類ご紹介していきます。
①: 「ずっと隣にいてくりょう」
「ずっと隣にいて欲しい」を甲州弁で言うと、こちらの表現になります。
「〜して欲しい」の「~してくりょう」が可愛らしい語感を生み出しています。
女の子からこんな甘え方をされたら、つい甘やかしてあげたくなってしまいますよね。
②: 「おまんが大好きじゃん」
「あなたが大好きだよ」を甲州弁で伝えた場合、この表現になります。
こちらは満面の笑みで言われたらキュンときてしまいそうなフレーズですね。
③: 「好きだっつこん」
直訳すると「好きということです」になりますが、表現的には単に「好きだ」ということを伝える甲州弁になります。
照れ隠しに少しぶっきらぼうに言っている感じが可愛らしく感じられます。
④: 「おれの側から離れちょし」
このフレーズは「離れるな」という意味を持つ強引な愛情表現です。
彼からこんなことを強めに言われたい女性も多いのではないでしょうか。
⑤: 「おめっさら抱きしめて」
甲州弁で「おめっさら」は「思いっきり」という意味になります。
このフレーズは「思いっきり抱きしめて」という意味になります。
【番外編】山梨県出身の芸能人や山梨で撮影された甲州弁の映画やドラマ
中田英寿(元プロサッカー選手)
ヒデの愛称で有名な元プロサッカー選手・中田英寿さんは、山梨県甲府市の出身です。
現在では実業家として活躍されています。
レミオロメン(ミュージシャン)
メンバーの藤巻亮太さん、前田啓介さん、神宮寺治さんは3人とも山梨県笛吹市出身です。
メンバーたちは、山梨県立石和高等学校(現:山梨県立笛吹高等学校)の同級生でした。
竹内直子(漫画家)
漫画家の竹内直子さんは、日本のみならず世界にもファンが多い大人気漫画「美少女戦士セーラームーン」の原作者です。
NHK連続テレビ小説「花子とアン」
2014年3月から放送された「花子とアン」の主人公である村岡花子さんは児童書「赤毛のアン」の翻訳者であり、山梨県出身でした。
花子の生家など、ドラマのロケ地として山梨県が使われました。主人公たちが話す甲州弁も印象的でしたね。
NHK大河ドラマ「真田丸」
2016年1月から放送された「真田丸」でも、山梨県でロケが実施されていました。
真田家は山梨(甲斐)の武将・武田信玄の家臣でした。このことから、縁の深い山梨で撮影が行われたようです。
山梨の方言は何種類?山梨弁の特徴は【あいさつ/定番/かわいい/告白】のまとめ
多くの人にとって、甲州弁は中々聞き慣れない方言でしょう。
今回ご紹介した甲州弁の中に、使ってみたい、面白いと思える言葉はあったでしょうか?
「〜しろし!」や「~ずら」など、甲州弁は語感が強めな単語が多いですが、自然に囲まれた静かな県だからこその温かい意味を含む方言でもあります。
皆さんも甲州弁の意味を理解して、楽しく使ってみてくださいね。