ガンジス川とは?場所と長さ
「ガンジス川」は、ヒンドゥー教にとって欠かせない、「聖なる川」です。
そもそも、「ガンジス川」は、人々の祈りによって、天界を流れていた聖なる川が地上に流れ、その巨大さで地上を壊さないよう「シヴァ神」が守っていると言われています。
そのためシヴァ神には、頭から水が流れ出ている様子が描かれています。
そんな天から流れてきた*ガンジス川自体も女神として「ガンガー」と呼ばれ、「川の女神」として祀られています。
ヒンドゥー教徒にとって、ここ「ガンジス川」は神聖な場所なのです。
「ガンガー」を流れる水は「聖なる水」とされ、日々多くのヒンドゥー教徒が身を清めにやってきます。
その光景は今や、インドの代表的な観光地となり多くの観光客が訪れます。
そんなヒンドゥー教にとって欠かせない「ガンジス川」は、インド北部にあり川沿いは古くから文明が栄えた場所で周辺には、歴史的にも貴重な場所が複数点在しています。
「ガンジス川」は広大な流域面積もつ川で、その全長は約2552kmと長く、流域面積は約173万㎢です。
その中で数多くの交流があり、多くの人が訪れる場所となっています。
ガンジス川はヒンドゥー教徒にとって聖なる川
聖なる川である理由
「ガンジス川」は人々の祈りによって天から降り注がれた川として神格化されていますが、人々は日照りに困り天に祈りを捧げたそうです。
日照りが続き水に困っていた人々に救いの手が差し伸べられ、人々の悩みを解決し、川の女神として「ガンガー」と呼ばれるようになりました。
「ガンジス川」の水は決して腐ることのないと言われ遠くから来た、ヒンドゥー教徒はみなペットボトルやポリタンクにガンジス川の水を詰め持って帰ります。
ガンジス川周辺では、こう言ったペットボトルやポリタンクが売られています。
ヒンドゥー教の聖地バラナシ
ガンジス川中流域にある「バラナシ」はインドの長い歴史の中で様々な宗教が栄えました。
インドの首都「デリー」から飛行機で1時間30分ほどで、電車なら12時間ほどかかる場所にあり、ヒンドゥー教徒が死ぬまでに一度はいきたいと願うのがこの「バラナシ」です。
実はこの「バラナシ」という地名はイギリス統治下時代につけられた名称で、それ以前は「ワーラーナシー」という名前でしした。
「バラナシ」にはザ・インドがたくさん詰まった観光地でもあります。
ごちゃごちゃした街並みが特徴的で、街には牛が歩き回り、道端の哲学者サドゥーといった「ガンジス川」以外にも見所がたくさん詰まっている街です。
世界中の人が想像するインドがここ「バラナシ」にあります。
無数に広がる細い路地を抜けた先に、広大に広がるガンジス川があります。
神秘的な光景もさることながら、静かで神々しいこの「バラナシ」はヒンドゥー教徒にとって生と死を象徴する街で、ここに全てが集結されていると言っても過言ではありません。
ガンジス川沿いでは火葬がされる
ヒンドゥー教徒にとって最大の聖地である「バラナシ」を流れる「ガンジス川」周辺では、火葬が行われています。
そして、その遺灰はガンジス川に流されています。
ガンジス川に遺灰を流すことで輪廻から解脱されると考えられています。
「輪廻から解脱」とは、輪廻することから解放され脱却することです。
「輪廻」とは、人は何度も転生し、生物(動物など)に生まれ変わることですが、インドの思考では生き死にを繰り返す輪廻が限りなく生存に苦しいと考えられています。
苦しい輪廻を繰り返さず悟りの境地に達すると信じられています。
そんな「バラナシ」最大の火葬場「マニカルニカーガート」は24時間休むことなく遺体を燃やし続けています。
我々日本人も火葬がポピュラーですが「バラナシ」では野ざらしで火葬が行われ日本のように骨壷があるわけではないく、そのままガンジス川に流されています。
4日間かけて火葬し、13日間安置してから斎場でお葬式を行いガンジス川に流すという一連の流れになります。
裕福な人は大きな薪を積み上げ、豪華な装飾品に身を包み盛大な火葬を行えますが、貧富の差が激しく、カースト制度があったインドでは、貧困層は250Rs(約500円)の薪も満足に購入できず、遺灰にならずに生焼けで「ガンジス川」に流される人もいます。
ガンジス川では沐浴が有名ですが、沐浴として身を清めているのではなく素潜りをしている人の姿を目撃します。
彼らは富裕層の遺品を回収しているのです。
こう言った行為も生と死が入り混じる場所と言われている「バラナシ」です。
日本人が観光で訪れた際に感じるカルチャーショックの1つと言われています。
人の遺体が火葬される様子を見るのはかなりショッキングでした。
火葬場は写真撮影できませんが、火葬のための薪が積まれている場所は、写真撮影できます。
また、ガンジス川のボートに乗って火葬を見学することもできます。
ガンジス川は遺体も流れる
火葬が主流なインドですが、輪廻からの脱却で火葬が行われています。
しかし、若くして亡くなったり、やり残したことがある人は火葬せずにそのまま川に流します。
輪廻してもう一度やり直すと言った考えもあるのです。
水葬の多くが子供で、実際「ガンジス川」には子供の遺体が流れています。
もちろん全ての子供というわけではありませんが、大人よりは子供の方が多いです。
妊婦や自殺者、事故死なども水葬の対象になりますし、カースト制度によって身分が低かった人や火葬代が支払えない人も水葬の対象になりそのまま川に流されます。
「インドにはお墓がない」と言われたりしますが、正式にはヒンドゥー教にお墓が存在しないということが、広がり「インドにはお墓がない」と言われるようになりましたが、実はこれは少し違うのです。
ヒンドゥー教でも僧侶の場合は土葬になるのでお墓があります。
なのでお墓がないのではなく「ガンジス川」自体がお墓という考えの方が正しいです。
ガンジス川は汚い?その理由は?
もともとは、ヒマラヤ山脈に水源を持ち山脈の氷河から流れ出ているのですが、インドの人口密度多い地域を経由しベンガル港に流れ込むまでには汚い川へと姿を変えます。
インドのモディ首相は2015年に約3170億円を投じて川の浄化を国民に約束しましたが、実際はその4分の1ほどの費用しか投じていませんでした。
そう言った問題を抱える「ガンジス川」ですが、これからも改善が続いていきます。
では、ガンジス川が汚い理由にはどのようなものがあるのでしょう。
ガンジス川が汚いのには、以下の理由があります。
- ごみが流れる
- 生活排水が流される
- 下水処理がされない
- 工場や農場からの化学物質
続いて、それぞれの理由を詳しくみていきます。
ごみが流れる
インド人はゴミをその辺に捨てる習慣があります。
ゴミが散乱している光景は発展途上国のアジアではよく見かけますが、インドは特にゴミが散乱しています。
インド人の国民性がこういった現状になっています。
ゴミを処理する施設が少なく国土、人口にあっていないので溢れたゴミが「聖なる川」を汚していきます。
「バラナシ」周辺でもゴミが打ち上げられ溜まっています。
しかし、そう言った現状に若者が声をあげ、行動に移しました。
地元の大学生が、「ガンジス川」がどれだけ汚れているのかをスピーチし、ボランティアで清掃を行なっています。
このゴミだらけの川で現地の人々は沐浴や洗濯をしているのは文化の違いを感じます。
生活排水が流される
ガンジス川では洗濯をしている人をよく見かけます。
こういった洗濯を仕事としている人たちがいて、いわゆるクリーニング屋さんのようなものです。
他にも、体をここで洗う人、歯を磨く人の姿も見かけます。
こういった生活排水が浄化されずにそのまま流されているという現状が一層、「ガンジス川」を汚していくのです。
下水処理がされない
遺灰や死体、ゴミが日常的に流されているガンジス川ですが、それだけではなく生活排水も流されています。
排泄物や洗剤といった汚水が浄化されずにそのまま流され「ガンジス川」を汚しているのですが、こういった汚水を処理する施設もまた少ないです。
下水処理率が10%と非常に低く日常的に流すことの慣れ、当たり前になっているのです。
ガンジス川では、下水処理がされていないことがわかるように、大腸菌が基準値を上回って検出されています。
工場や農場からの化学物質
これが一番の問題です。
下水処理がされていないのでそのまま川に流されている化学製品は、生活の重要な役割を果たしている「ガンジス川」においてもっとも汚染を進めている原因です。
インドでは工場排水に関する管理が取られておらず、問題視されていますがなかなか改善されず、インドにある14の主要運河と流域は汚染され、地下水に関しては全土に渡り汚染されていると言われています。
こういった現状で今、ガンジス川は80%が汚染されていると言われています。
ガンジス川は沐浴が見どころ
ガンジス川では沐浴の様子が見られる
ガンジス川では日々多くのヒンドゥー教徒が沐浴で身を清めています。
そもそも沐浴と宗教的な認識が多いですが、胎児の体を洗うことも沐浴とされています。
他にもお寺等で煙を頭にかける文化が日本にもありますが、そういった行為も沐浴です。
要は、身を清めること全体が沐浴なのです。
そんな沐浴をまじかで見られる「バラナシ」。入るのはお勧めしませんが眺めるなら1番いいスポットです。
中には頭を洗う人も。
沐浴するのは男性だけでなく、女性もサリーを着たまま沐浴していました。
ヒンドゥー教徒がガンジス川で沐浴する理由は?
「ガンジス川」を流れる水は「聖なる水」とされています。
そんな聖なる水で沐浴することで、全ての罪を清めることができると信じられています。
日本の禊といったニュアンスで、それを日々行い毎日、自分の罪を自分自身に問いかけているのです。
インドでの沐浴の歴史は古く世界四大文明のインダス文明の時代まで遡ります。
インダス文明の遺跡には沐浴場が見つかっています。
約4000年前から現在まで行われている由緒正しい行いといえるのです。
沐浴は「ガート」と呼ばれる階段状になった場所からここなうので、バラナシのガンジス川付近には無数のガートが点在しています。
牛も沐浴する
沐浴は人間だけではありません。
人間以外も沐浴しています。
牛を始め、犬や猫、ヤギ、羊、ネズミといった動物も体の汚れを落とし、温泉のようにゆっくり浸かり、疲れを癒しています。
中には狼までいることもあります。
天然の動物園といった距離感で動物を見られます。
中でも牛はたくさんいます。
沐浴している方の周りを牛が囲んでしまうこともあります。
「バラナシ」は、街にもかなりの数、牛がいます。
街中のいたるところの牛が居るのですが、ガンジス川の中にも牛がたくさんいます。
さらに、飼い主の家族なのか、沐浴している牛と川の中で遊んでいる子供がいてかなり衝撃でした。
日本人観光客が沐浴するのは危険?
ガンジス川は80%汚染されていると言われ、インド政府が定める基準値よりも100倍も高い細菌が見つかっている非常に危険な川です。
2007年には「世界でもっとも汚染された運河5選」に選ばれるほど汚染されています。
日頃から沐浴しているインド人だから平気ですが、清潔感のある環境で日常的に暮らす日本人にとってはかなりの確率で感染症を起こします。
なので沐浴には危険が伴います。
そんな中で、日本の映画で「ガンジス川でバタフライ」という映画があります。
長澤まさみさん主演で実際にガンジス川をバタフライで泳ぐというシーンがあり多くの人が真似をしようとしましたが、危険なため注意しましょう。
もしどうしても沐浴体験したければ、「ハリドワール」に向かうことをお勧めします。
「神の門」と名付けられた知名通り、ガンジス川の水質は「バラナシ」よりは綺麗です。
インドの首都「デリー」から電車で5時間ほどで、車で7時間ほどで到着します。
それでも、手や足だけをつけることをお勧めします。
足だけ沐浴するのでも、十分ひんやりとした川の感触は伝わり、沐浴をした気分にはなれます。
ただ、足に傷などがあると、そこから感染症になる可能性があるので、傷がある方は沐浴はしない方がいいと思います。
ガンジス川ではボートに乗ろう!
ガンジス川でボートに乗れる
沐浴は危険が伴いますがせっかくガンジス川に来たら川の上に行きたいと思いますよね。
そんな時はボートの上からガンジス川を眺めるのがオススメです。
ガンジス川にはボートツアーがありこれが観光客には大人気で、多くの観光客で賑わっています。
川から「バラナシ」の街並みを眺めるのも非日常感があってオススメですし、登ってくる朝日をボートの上から眺めるのも綺麗です。
沈んでいく夕日や礼拝の儀式プジャーを船の上から眺めるのもいいです。
ガンジス川の河岸で船を作る職人さんの姿を見られます。
木を組み合わせて1から作る船を、まじかで見る体験は、なかなか出来ないので特別感があります。
人気な手漕ぎボートから小型船まで様々なので、乗ってみたいボートに乗ってみてください。
ボートでは、ガ―トをガイドの解説を交えながら回ってくれるので、ヒンドゥー教や火葬についてかなり勉強にもなりました。
朝のボートではガンジス川に昇る朝日を見ることができ、朝日がガンジス川に映る様子が絶景で感動しました。
また、夜には祈祷の様子をボートから見ることができ、陸から見るのとはまた違った幻想的な祈祷に心が打たれました。
ボートの乗り方
「バラナシ」周辺のホテルに宿泊した場合はホテルがボートツアーを斡旋しているのでそちらを利用するのが便利です。
サンライズを眺める際は朝5時集合が平均で、料金は2人で800RS(約1300円)くらいです。
値段はあるようで無いのがインドです。
必ず交渉が始まります。
ホテル等はあまり値段交渉を受け付けませんが、ガンジス川付近で乗船しようとした場合手漕ぎのボートは必ず交渉が始まりますので注意してください。
交渉にはトラブルが付きまとうので安全策は大きめの船に乗ることをお勧めします。
朝ホテルのロビーに集合し、ホテルが所有するボートに乗る形で、面倒な値段交渉もなく、楽でした。
ボートに乗りたい場合は、ボートツアーをやっているホテルに宿泊するのがかなりおすすめです。
ガンジス川沿いで祈祷(プジャー)を見るのもおすすめ
プジャーとは
ガンジス川の見所は沐浴以外にもあります。
毎晩日没後に行われる儀式「プジャー」も見応えがあります。
夜になるとガンジス川沿いに、祭壇と言われる台座が設置され、バラモンと言われる選ばれた人たちが祭壇の上に、上がります。
そして、祭壇の上で祈りを捧げます。
その姿を見ようと観光客も、地元の人も集まってきます。
バラモンとはカースト制度の最上位の階級で、生まれながらにトップなんです。
カースト制度自体は廃止されていますが、こういった名残が残っているのもまたインドです。
見応えがあるのですが、祈祷には多くの人が集まるため大変混雑します。
火を使った祈祷は厳かな雰囲気で、かなり印象に残りました。
また、祈祷には、ナガババと呼ばれる仙人もやってくる時があります。
祈祷を行われるガ―トはかなり混雑して、祈祷の終了後、なかなか帰れない場合もあるので早くホテルに戻りたい場合は、祈祷が終了する前に早めに切り上げて帰ることをおすすめします。
プジャーが見られる場所
「プジャー」は「バラナシ」のもっとも有名なガート「41番:ダシャーシュワメード・ガート」で毎晩開催されています。
日没前から多くの人が集まっているので比較的わかりやすいです。
ガ―トの階段状になっているところに座ってみる人がいるほか、祈祷の行われている場所の前に布が敷いてあるのでそこに座ってみることもできます。
時間帯ごとのガンジス川
朝のガンジス川
日の出前から、多くの人が集まりガンジス川対岸から登る日の出と一緒にお祈りが始まります。
「お祈りをしながら水をあびる人」や「体をゴシゴシと体を洗う人」とスタイルは様々ですが浮き輪で遊ぶ子供も見受けられます。
聖なる川で遊ぶ子供たちは無邪気に水を楽しんでいます。
昼のガンジス川
日中には多くの観光客が沐浴を観光しています。
沐浴の他にも、川沿いで洗濯や散髪をする人々の姿を見ることもでき、現地の生活がわかります。
川沿いでおしゃべりする大人たちや遊んでいる子供の姿も。
生き生きとしたインドの生活を見学できます。
夜のガンジス川
日が沈むとバラモンによる、祈祷が行われ、お香が炊かれ独特な匂いとともに夜のガンジス川をより一層神格化し、美しい空間を演出しています。
祈祷には多くの人々が集まり、さながらお祭りのような雰囲気になります。
ガンジス川観光のベストシーズン
インドは猛暑日では50度近くまで気温が上がることがあり、日本とは比べられないほどの暑さがあります。
そんなインドの「バラナシ」にある「ガンジス川」を訪れるのにベストなシーズンは10月〜3月となります。
10月〜3月はインドの冬になり、過ごしやすく観光に最適なシーズンです。
10月〜11月の間に行われる「ディープ・ディパワリー祭り」や2月〜3月ごろに行われる「マハー・シヴァ・ラートリ」などのイベントもあるので、この時期に訪れるのがおすすめです。
ガンジス川からインドを知ろう
ご紹介したように、ヒンドゥー教徒にとっての聖地であるガンジス川からは、インドの信仰や日常生活、そして火葬などインドの文化を、身をもって体験できます。
日本人の沐浴には危険が伴いますが、沐浴やボート乗船などの体験を通じて、より深いインドを学べることは間違いありません。
ぜひインド観光の際にはガンジス川を訪問して、ディープなインドを体験してみてください!
都内の大学に通う女子大生。
遺跡巡りを中心とした、世界の歴史や文化を知る旅が趣味です。
春休みに2週間かけてインドを旅行したほか、夏休みには1か月以上かけて陸路でイラン、アゼルバイジャン・ジョージア・トルコを回りました。
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