ムター博物館ってどんなところ?
この不思議で魅力的なスポットは、アメリカのイーストコーストでニューヨーク市に次ぐ大都市であるフィラデルフィアにあります。
ダウンタウンの片隅にある瀟洒なレンガ造りのビルが博物館になっています。
この博物館と言えば、「アインシュタインの脳味噌のスライス」や「石鹸おばさん」などといった猟奇的な人体標本が立ち並ぶホラースポットや「オカルトの館」のようなものと勘違いしている人も多いのですが、実際はいたって真面目な医学博物館なのです。
そもそも、「ムター博物館」の存在するフィラデルフィアという街は、アイビーリーグで全米屈指の名門でもあるペンシルベニア大学に、アメリカ初となる医学部が設置されたことでも知られる、医学教育の盛んな土地です。
アメリカにおける「医学の都」と言っても良い都市がフィラデルフィアであり、そんな特性の街だからこそ医療の発展に寄与する医療博物館である「ムター博物館」が存在しても何の違和感もないのです。
現在、この場所には、20,000点を超える及ぶ人体展示が行われており、世界中から年間6万人もの人々が訪れる人気観光スポットとなっています。
日本でも「フィラデルフィアを訪れたならアインシュタインの脳が展示してあるムター博物館へ行っておいたほうがいい」という声はよく聞きますよね。
ムター博物館が作られた目的は?
医学博物館である「ムター博物館」の作られた発端は極めて個人的な事情によるものでした。
ジェファーソン医科大学に長年研究者として勤務していたT.D.Mutter博士は、1858年に同大学を退職し、引退しました。
その時に、博士が長年個人的に所有してコレクションというほど数が多くなっていた人体標本とその他たくさんの医学標本をフィラデルフィア医師協会に、後進の研究に役立てて欲しい、と寄贈しました。
このことが、「ムター博物館」が創設されるきっかけになったわけです。
その後に、ムター博士が寄贈した人体標本や医学標本だけでなく、他の医学博士や研究者たちから寄贈されたものも追加して、まとめて展示しようと始まった博物館が「ムター博物館」なのです。
その名称は、当然最初に標本を寄贈したトーマス・デント・ムター博士の名前に由来しています。
現在では、レンガ造りのシックな洋館の中には2万点を超える人体標本や医学標本が所狭しと立ち並び、世界の医学博物館でも規模、展示数とも有数のものとなっています。
ムター博物館の営業時間や入場料金は?
フィラデルフィアの観光名所でもあるこの施設の営業時間や入場料金は、以下の通りです。
人気のある観光スポットで人も多いですが、チケットは特に事前予約の必要は無く、行った当日に博物館入口の窓口で購入できます。
窓口でチケットを買い求めると、クリップを貰うことができます。
このクリップを服や持ち物につけて、館内を閲覧鑑賞して回るというシステムになっています。
尚、館内での写真撮影はNGなので気を付けましょう。
ムター博物館
住所:19 S 22nd St, Philadelphia, PA 19103 アメリカ合衆国
電話番号:+1 215-560-8564
営業時間:+1 215-560-8564
定休日:-
入場料や利用料:大人18ドル、子供(6~17歳)及び学生証携帯の学生13ドル、シニア(65歳以上)16ドル
URL:ムター博物館
ムター博物館の行き方は?
日本からフィラデルフィアの「ムター博物館」へ行くにはどうやっていけば良いのでしょうか?
まず、日本の各主要国際空港からフィラデルフィア空港まで飛んでいるノンストップの直行便はありません。
日本からフィラデルフィアに空路で行く場合には、羽田・成田・関西の各国際空港からは、サンフランシスコ経由で国内線に乗り換えてフィラデルフィアに行くのが一般的なルートです。
羽田・成田・関西の国際空港からサンフランシスコまでの国際線は約10時間のフライト、サンフランシスコからフィラデルフィアまでの国内線でのフライトが約5時間20分程度です。
成田からは、シカゴまでの直行便で行ってから、国内線に乗り換えてフィラデルフィアに向かうルートもあります。
フィラデルフィア国際空港はかなり大きな空港です。
空港から目的のスポットへは、タクシーでの移動が最も無難で確実でしょう。
アインシュタインの脳や奇形標本に石鹸おばさん!ムター博物館に展示されてるものは?
ムター博物館の展示品①:アルバート・アインシュタインの脳
数多い変わった人体標本の数々を誇る「ムター博物館」の展示物の中でも、最も有名であり看板になっている展示標本が「アインシュタインの脳」です。
アルバート・アインシュタインは言わずと知れた、相対性理論や量子論で知られる人類史上最高の天才物理学者です。
この天才の脳味噌が、この世にも珍しいスポットには、薄い切片にしたものがセットになり数十枚まとめて展示してあるのです。
この稀有な大天才は、1955年に動脈が破裂する病気によって亡くなったのですが、この臨終に立ち会った医師が本人の承諾もなくこの稀代の大天才の脳をホルマリン漬けにしたので、死後も脳だけ保存されたのです。
その後、天才の脳として研究対象に切り刻まれ、この地に展示される経緯になったのでした。
ムター博物館の展示品②:石鹸おばさん
「ムター博物館」において、前出の大天才の脳味噌に次いで有名な展示物は、石けんおばさんでしょう。
石けんおばさんというのは、18世紀に熱病によって死亡したとされる婦人の遺体で、死後、アルカリ性の土壌に埋葬されたことによって、死体の脂肪が腐敗せずに死蝋となった珍しい人体標本です。
その死蝋の様子が、まるで固めた石鹸のようであることから、「石けんおばさん」と呼ばれているのです。
ムター博物館の展示品③:世界22か国の頭蓋骨のコレクション
医療博物館とはいえ、かなりグロテスクな展示品の多い「ムター博物館」にあっても、特に閲覧客の目を奪うオカルトな展示物が、100を大きく超える数の本物のスカルが並べられたコレクションスペースでしょう。
これらの大量のしゃれこうべたちは、19世紀の後半にDr.ヒルトルから寄贈されたものです。
これらの頭蓋骨は世界22か国から博士が集めたコレクションだそうです。
ムター博物館の展示品④:結合性双生児の人体標本
胸部が軟骨で結合された状態のまま誕生した結合双生児・チャン・ブンカ―&エン・ブンカー兄弟の人体標本の展示もこの医療ミュージアムの珍しい展示物で、多くの閲覧客の目を惹きつけています。
1874年に亡くなった2人の遺体は、解剖後にここに寄贈されました。
今も兄弟向かい合う結合した形で展示されています。
ムター博物館の展示品⑤:角が生えた貴婦人
「ムター博物館」の広いとはいえない館内を閲覧していてぎょっとなる展示物の1つが、サイのように額の真ん中にツノを生やした婦人の顔面の標本でしょう。
この顔面標本の主は、19世紀のフランスで生きたディマンシュ夫人という女性です。
爪とよく似たタンパク質でできた25cmほどの角が額からにょっきりと生えていました。
この奇異な物体は婦人が生きている時代に、手術によって取り除かれたそうです。
ムター博物館の展示品⑥:古代マヤ文明時代の外科手術の痕跡
「ムター博物館」の数多い頭蓋骨の展示物の中でもとりわけ興味深いものに、「人類最古の外科手術痕の頭蓋骨」があります。
頭蓋骨に明らかにロボトミー手術のような人工的な手術孔の開けられた頭部の骨です。
これらは、古代マヤ文明や古代アステカ文明の跡から見つかりました。
人類の文明の開始時期の認識を考えさせられる不思議な展示物です。
ムター博物館の展示品⑦:リンカーン大統領を暗殺した男の脊椎
「ムター博物館」には、一風変わった展示物(医療標本)も展示されています。
1865年に、エイブラハム・リンカーン米大統領を射殺した暗殺犯ブースの脊椎がその代表的な展示物でしょう。
リンカーン大統領と言えば、有名な奴隷解放宣言を行った南北戦争の英雄でもあるので、英雄を暗殺した不埒な暗殺犯の脊椎を見せしめに罰として抜き取り医療標本にする、という意図があったのかもしれませんね。
ムター博物館には薬草ガーデンも。
おどろおどろしくホラーチックなイメージの強い医学博物館である「ムター博物館」ですが、実は、瀟洒なレンガ造りの洋館ビルの狭間の中庭スペースには、美しい薬草ガーデンもあります。
このスペースでは、結婚式のパーティーやビアガーデンなども時期によっては催されているようです。
ムター博物館で写真撮影はできる?
世界的にも珍しい展示物の多い医学博物館である「ムター博物館」の展示物を写真に収めたいと思う観光客が多いのは人情でしょう。
しかし、残念ですが館内での人体標本や医療標本などの展示物の写真撮影は禁止されています。
その代わり、公式サイトや公式インスタグラム上で多くの展示物は閲覧可能なので、自分が実際に見た展示物をそういった公式のWEBで教えることは可能です。
展示物の並ぶ館内に入ったら写真撮影は禁止ですが、建物の外やエントランス付近での記念撮影はOKなので、展示を見終わった後で建物の前で記念撮影すると良いでしょう。
ムター博物館では医学や人体の展示会も開催される!
「ムター博物館」は、医学博物館ですが単に1博物館としてだけ存在しているだけではなく、実に数多くのイベントや展示会が年間を通して催されています。
当然、医学に関する展示会は多く、過去に催された展示会の一例を挙げると、「私たちの肌の重ねた歴史」(皮膚の生物学、病理学および文化的側面を探る展示会)や、「グリムスの解剖学:魔法と医学」(おとぎ話と医学の関係を探る展示会)といったものがあります。
ムター博物館にはお土産屋さんも!
「ムター博物館」では、館内にお土産ショップがあります。
博物館に来たら、記念にレアなここでしか買えないレアなお土産を買い求める閲覧客で毎日ごった返しています。
博物館によっては、館の閲覧エリアの外にお土産ショップが建っているパターンもありますが、「ムター博物館」の場合には、チケットを買って入館してからでなければ、お土産ショップには立ち寄れない造りになています。
ですから、一通り博物館の展示物を見て回った後にお土産を買うというルートが一般的でしょう。
ムター博物館はイベントで一部閉館することも。webサイトをチェックしよう!
「ムター博物館」は、ペンシルベニア大学によって運営されている施設なので、特に大学関連の様々なイベントに使用されることも多いイベントスペースでもあります。
ですから、時期によってはイベントのために一部閉館することもままあるので注意が必要です。
せっかく日本からはるばる「ムター博物館」にやってきたのに、イベントのため臨時閉館状態だったら泣くに泣けませんよね。
このようなことを予防するためにも、スケジュールを立てる前に必ず「ムター博物館」の公式webサイトで日程をしっかりチェックするようにしましょう。
付け加えると、決して広くはない建物に年間6万人もの観光客が世界中からやってくるので、混んでいて当たり前だと考えた方が良いですね。
特に土日は常に大混雑は当たり前なので、できれば人の少ない平日の午前中などであれば、ゆっくりと時間をかけて展示物の閲覧ができるでしょう。
【番外編】ムター博物館があるフィラデルフィアの行き方や主要観光地は?
フィラデルフィアへの行き方
前述した通り、日本からフィラデルフィアへの飛行機の直行便は無く、サンフランシスコやシカゴ、もしくはデトロイトなどにまずは日本の各国際空港から国際線で飛び、アメリカの国内線に乗り換えてフィラデルフィア国際空港へ向かう必要があります。
比較的近隣のニューヨーク市旅行のついでにフィラデルフィアにも立ち寄りたい場合には、電車、もしくはレンタカーを借りて車で、博物館に来るのが車社会のアメリカでは最もスムースでしょう。
ムター博物館には駐車場も用意されています。
フィラデルフィアの主要観光地
では、フィラデルフィアの観光地をみていきましょう。
フィラデルフィアには、ムター博物館の他にも以下の5つの観光地があります。
- フィラデルフィアシティホール(市庁舎)
- フィラデルフィア美術館
- ワン・リバティ展望台
- アドベンチャーアクアリウム(水族館)
- 独立記念館
続いて、フィラデルフィアの観光地を、それぞれ詳しくみていきます。
フィラデルフィアの観光地①:フィラデルフィアシティホール(市庁舎)
ファラデルフィアの象徴とも言われるフィラデルフィアシティホール(市庁舎)は、石造建築の建物としては世界一の高さを誇っています。
19世紀末期から20世紀初頭にかけて建築された建造物ですが、その意匠の豪華さと荘厳さは、アメリカでは群を抜いており、中世ヨーロッパの巨大な歴史的建造物を見ているような錯覚に陥ります。
夜景も抜群に美しいスポットです。
フィラデルフィアシティホール
住所:1400 John F Kennedy Blvd, Philadelphia, PA 19107 アメリカ合衆国
電話番号:+1 215-686-1776
営業時間: 8時00分~17時00分
定休日:土・日曜日
入場料や利用料:-
URL:フィラデルフィアシティホール
フィラデルフィアの観光地②:フィラデルフィア美術館
ニューヨークに有名なメトロポリタン美術館があるように、フィラデルフィアにも巨大なフィラデルフィア美術館があります。
大きな美術館の建物の前には、映画『ロッキー』のヒーロー・ロッキー・バルボア像もあり、記念撮影スポットとなっています。
本館の他に、Perelman Buildingという別館もあり、とても広大な美術館で、十分1日潰れます。
フィラデルフィア美術館
住所:2600 Benjamin Franklin Pkwy, Philadelphia, PA 19130 アメリカ合衆国
電話番号:+1 215-763-8100
営業時間:月火木土日 10時00分~17時00分、水・金 10時00分~20時45分
定休日:-
入場料や利用料:大人20ドル, シニア18ドル, 学生14ドル, 12歳以下無料
URL:フィラデルフィア美術館
フィラデルフィアの観光地③:ワン・リバティ展望台
まだできて年月が経っていないですが、早くもフィラデルフィアの新名所として大人気なのが、ワン・リバティ展望台です。
大都市フィラデルフィアの街でも2番目に高い高さ270m、地上57階のビルOne Liberty Placeに2015年にできたフィラデルフィアの景観を360度楽しめる展望スポットです。
フィラデルフィアの誇りであるベンジャミン・フランクリンをモチーフにしたオブジェやお土産品が特徴的な観光スポットです。
ワン・リバティ展望台
住所:1650 Market St #5700, Philadelphia, PA 19103 アメリカ合衆国
電話番号:+1 215-561-3325
営業時間:10時00分~20時00分
定休日:-
入場料や利用料:大人 1,633 円
URL:ワン・リバティ展望台
フィラデルフィアの観光地④:アドベンチャーアクアリウム(水族館)
フィラデルフィアからデラウェア川を渡ったニュージャージ側にある観光スポットが、Adventure Aquarium(アドベンチャー水族館)です。
特徴は非常に多くのサメが見られる広い水族館で、様々なアトラクションも行われています。
水槽のディスプレイも様々な趣向を凝らした展示の仕方で全く飽きない造りとなっています。
アドベンチャー水族館
住所:WVW9+9G カムデン, アメリカ合衆国 ニュー・ジャージー州
電話番号:+1 844-474-3474
営業時間:月~金 9時30分~16時00分、土日 9時30分~17時00分
定休日:-
入場料や利用料:大人28$、子ども(12才以下)21$、2才以下無料
URL:アドベンチャー水族館
フィラデルフィアの観光地⑤: 独立記念館
アメリカは、18世紀の後半に独立戦争に勝利して独立国家となりました。
その独立戦争当時、北米において最も大きな都市でした。
Independence Hall(独立記念館)はもとはペンシルヴァニア州の議事堂として使用されていましたが、アメリカ独立宣言がこの地で発せられたのを機に、 Independence Hallと名乗るようになりました。
今では世界遺産にも登録され、まさに「アメリカ合衆国はじまりの地」と呼ぶにふさわしい場所でもあります。
独立記念館
住所:520 Chestnut St, Philadelphia, PA 19106 アメリカ合衆国
電話番号:+1 215-965-2305
営業時間:8時30分~17時00分
定休日:-
入場料や利用料:入場無料
URL:独立記念館
ムター博物館に関するまとめ
フィラデルフュアにある世界でも珍しい規模の医学博物館である「ムター博物館」について掘り下げて様々な考察を行ってきました。
加えて、フィラデルフィアの他の観光名所もご紹介しました。
フィラデルフィアはアメリカ合衆国発祥の地であるとともに、医学の都でもあることがわかりましたね。
そのような都市だからこそ「ムター博物館」のような異色のミュージアムもあるのでしょう。
フィラデルフィアに旅行する機会があれば、他の名所とともに是非訪れてみたい場所が「ムター博物館」です。