【首都の前に】世界最小の国、バチカン市国はどんな国?
イタリア・ローマの中にある小さな都市国家。それがバチカン市国です。
ローマ法王を元首として、ローマ教皇庁が治める世界で最も小さな国。国全体が世界遺産に登録されています。
今回は、カトリックの総本山とも呼ばれるバチカン市国について詳しくご紹介していきましょう。
バチカン市国の地理や面積
バチカン市国は、イタリアで3番目に長いテベレ川西岸近くにあります。聖ペテロ殉教の地であるサン・ピエトロ広場以外は、古い城壁に囲まれています。
国の面積は0.44㎢、日本の皇居は1.15㎢ですから、それよりもさらに狭いことになります。ちなみに世界で2番目に面積が狭い国、モナコ公国は約 2㎢ですから、その小ささがよくわかりますね。
ちなみに、バチカン市国には市国外にもイタリア領土内に治外法権を有する施設(直轄地)を持っています。例えば、ルネサンスの巨匠、ベルニーニのお墓がある「サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂」がそうです。
バチカン市国の歴史は?
64年頃に古代ローマ皇帝、ネロの迫害により、殉教したキリストの使徒ペテロが、バチカンの丘に葬られたのが始まりといいます。
324年に同じくローマ皇帝である、コンスタンティヌスがペテロの墓地の上に、聖ピエトロ聖堂を建設して以来、この場所がローマ教皇庁に。754年にフランク王国カロリング朝国王、ピピンがラヴェンナ等の都市をローマ法王に寄進。法王領が成立しました。
1870年にイタリア王国軍が、ローマ市を首都として軍事的に占領し、法王領に侵入。イタリア政府とローマ教皇庁の対立が続きます。
1929年に両者の間で結ばれたラテラノ条約により和解。独立した主権国家としてイタリアが承認したことで、バチカン市国が誕生しました。
参照元:外務省のホームページ
バチカン市国の国旗はどんなデザイン?
バチカン市国の国旗は、白と黄色の縦2色旗。白地の中央には、金と銀の鍵、教皇冠があしらわれた紋章が描かれています。
金と銀の鍵は、キリストから聖ペテロが与えられた天国への門を開く「天国の鍵」を意味します。その場面を描いたペルジーノの「聖ペテロへの天国の鍵の授与」は、システィーナ礼拝堂でみることができますよ。
旗に使われている黄色と白は、法王庁の衛兵の帽子の色に由来するという説と、エルサレムの神旗に由来するという説があるそうです。
バチカン市国の首都はバチカン。人口や言語、通貨は?
世界でも類を見ない小さな都市国家であるバチカン。その人口は約800人前後といいます。
国民のほとんどが聖職者や修道士、修道女。法王や宮殿を警護するスイス人衛兵も含まれます。
さらに、法王庁64機関には2,880人ぐらいの職員が働いていますが、イタリアから通勤する「外国人」。そのほとんどがイタリア人です。
バチカン市国の国籍を持っている人は、国際的に二重国籍が認められているので、従来の国籍も併せ持っている人がほとんど。教皇庁の職員については、外交に関わる仕事についている人以外は、バチカン国籍を持ちません。
バチカンの公用語は、古代ローマ帝国の公用語だったラテン語が使われています。日常業務はイタリア語、外交用語はフランス語ですが、簡単な英語なら通じるようです。
市国内で使われている通貨はイタリアと同じユーロ。市国内には独自の銀行や郵便局、貨幣を作る鋳貨(ちゅうか)施設もあります。
バチカン市国の首都にはどんな施設があるの?
一つの都市がそのまま独立国家となったバチカン市国。バチカン市がそのまま国であり、首都でもあります。
バチカン市の中心ともいうべき施設は、サン・ピエトロ大聖堂とバチカン宮殿です。
サン・ピエトロ大聖堂はカトリックの大本山。バチカン宮殿はローマ教皇の住まいでもあります。
バチカン宮殿内には、世界でも類を見ない美術品の数々を集めた美術館と、その中にあるシスティーナ礼拝堂。8万冊以上の希少な図書を収容する図書館などがあります。
サン・ピエトロ大聖堂の目前にあるサン・ピエトロ広場ももちろん、バチカン市国。イタリアとの国境にある「天国の門」をくぐり、自由に出入りできますよ。
どんな人たちがバチカン市国の首都で生活をしてるの?イタリアとの関係は?
ローマ法王を元首とするバチカン市国。ローマ・カトリック教会の最高指導者でもあります。
バチカン市国の国民のほとんどは聖職者であり、ローマ教皇庁が国を治めています。
バチカン市国が独立国家となる前は、イタリアと対立関係にありました。1929年のローマにあるサン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂において、取り交わされた「ラテラノ協定」により和解。
この協定により、カトリックがイタリア唯一の宗教となりました。このことでローマ教皇が絶対的主権を持つバチカン市国が、独立国家として認められたのです。
バチカン市国は、どの国の人であっても出入りが自由で、特にパスポートは必要ありません。
なぜスイス人衛兵がバチカン市国の首都を守るの?
バチカン市国には軍隊はありません。法王と宮殿を警備するのはスイス人衛兵です。
なぜ、スイス人衛兵なのでしょうか?それは、1527年にバチカンが古代ローマ帝国軍に攻め込まれた際、スイス人衛兵が身を挺して法王を守り抜いたというエピソードが起源といわれています。
主な産業を持たないスイスが世界に輸出したのが、戦いのプロとしての傭兵。その活躍著しかったスイス兵が、教皇の警護のために常勤するようになったのは1506年頃からだといいます。
スイス衛兵は、鮮やかな青と黄色、赤のストライプの制服を身に着けています。ミケランジェロがデザインしたいう説もあるこの制服は、16世紀のルネッサンス期のデザインを元にしているそうですよ。
バチカン市国には、スイス人衛兵が約1,000人前後勤務しています。
衛兵交代の時間は、毎日1時間ごと。秀麗眉目の兵士を写真におさめるシャッターチャンスになっています。
バチカン市国の首都に日本の大使館はあるの?日本との関係は?
こちらも外務省のホームページを参考に、ご紹介していきましょう。
日本とバチカンの関係は、1549年に来日したイエスズ会の聖フランシスコ・ザビエルが鹿児島にやってきたことに始まります。
江戸時代の禁教令や鎖国令により、交流は断絶。明治維新後に解除され、信教の自由が保障され、日本でもカトリック宣教が始まります。
バチカンと正式な外交関係が樹立するのは、第二次世界大戦中の1942年のこと。お互いの国に公使館を設置しますが、戦後いったん引き上げ、1952年に再設置されます。
バチカン日本公使館は、1958年に大使館に格上げ。1981年にはヨハネ・パウロ二世が来日し、昭和天皇と謁見しました。
世界には約11億人いるといわれるカトリック信者のうち、日本人は約45万人程度。法王に次ぐ地位にある枢機卿に、5名の日本人が選ばれたことがあるそうです。
バチカン市国の首都ならではの食べ物ってあるの?
バチカン市国の国民は、他の国から聖職者として移り住んできた人たちです。離職するとバチカン国籍を失いますので、伝統的な郷土料理というものは存在しません。
カトリック教には、食の禁忌はありませんので、比較的自由になんでも食べられます。在籍したそれぞれの国の料理を、おのおの楽しんでいるようです。
バチカン市国では、観光客が入れる場所が制限されています。このため、町中で自由に飲食できるわけではありません。
バチカン市国は、聖ペテロが祀られている神聖な場所にあります。例えば、サン・ピエトロ広場でテイクアウトの食べ物を食べるなどは大変失礼に当たりますのでご注意を。
バチカン市国で飲食できるところは、バチカン美術館の中。セルフサービスのカフェテリアやピッツェリア、バール、レストランなどがあります。
バチカン市国観光で食事をするなら、美術館で食べるか、いったん出国し、ローマ市内で済ませて戻るようにしましょう。
バチカン市国の首都への行き方は?
ローマから徒歩で簡単に行くことができますし、もちろん行き来は自由。パスポートも特に必要はありません。
主なアクセス方法は以下の3つです。
- 地下鉄
- 路線バス
- トラム(路面電車)
それぞれ詳しく見ていきましょう。
地下鉄でのアクセス
ローマ・テルミニ(Termini)駅からA線に乗り、オッタヴィアーノ駅(Ottaviano)で下車。サン・ピエトロ広場の入口まで徒歩10分ぐらいです。
バチカン博物館に行く場合は、同じくA線でひとつ先のチプロ駅(Cipro)で下車。博物館の入口まで徒歩約10分で到着します。
路線バスでのアクセス
32番、81番のバスに乗り、リソルジメント広場(Piazza Risorgimento)で下車し、徒歩5分ぐらいです。
バチカン博物館なら、49番のバスで「ムーゼイ バチカーニ(V.le Vaticano/musei Vaticani)」が便利。入口の真ん前で降りれます。
ちなみに64番のバスでも、サンピエトロ広場に行きますが、スリ天国といわれるほど被害が多い路線。できれば避けた方が無難です。
トラム(路面電車)でのアクセス
テルミニ駅からトラム19番に乗車。リソルジメント広場(Piazza Risorgimento)で下車し、徒歩5分ぐらいです。
地下鉄、バス、トラムの利用方法での注意点は、乗車したらまずチケットに刻印すること。刻印がないと無賃乗車とみなされ、罰金の対象になるのでご注意ください。
ちなみにバチカン市国には、世界最短の国有鉄道があります。イタリアの鉄道路線への乗り入れが認められていますが、主に輸入商品の貨物輸送として使用。
一般の観光客が利用することはありません。
バチカン市国の首都を観光しよう!
バチカン市国は大変小さな国。さらに、一般の観光客が出入りできる場所は制限されており、以下の3か所が観光スポットになります。
- サン・ピエトロ大聖堂
- バチカン博物館(美術館)
- システィーナ礼拝堂
全世界から大勢の観光客がやってくるため、いつも大混雑しており、厳しいセキュリティチェックもあります。それぞれの観光地の見どころをご紹介していきましょう。
バチカン市国の観光地①:サン・ピエトロ大聖堂
カトリック・キリスト教で世界最大級の大きさを誇るサン・ピエトロ大聖堂。ミケランジェロが制作した「ピエタ像」やベルニーニ作の大天蓋「バルダッキーノ」などで有名です。
建てられたのは4世紀ごろで、その後、16~17世紀にかけてブラマンテ、ラファエロ、ミケランジェロらが改築に関わりました。体力に自信のある人なら、300段という階段を上り、クーポラからローマの街並みを眺めるのもおすすめですよ。
サン・ピエトロ大聖堂
住所:Piazza San Pietro, 00120 Città del Vaticano
電話番号:06 698 83731
入館時間:7時~18時30分
※4~9月は7時~19時
定休日:日曜のミサ、イースターなどの宗教行事日
入場料や利用料:大聖堂は無料
※クーポラへ昇る場合、エレベーター利用は大人1人8ユーロ、階段利用は大人1人6ユーロ
URL:http://www.vatican.va/various/basiliche/sanpietro/indexit.htm
バチカン市国の観光地②:バチカン博物館
バチカン博物館は5万㎡という広大な敷地内に、約25の美術館、博物館が集まっています。全長7kmにも及ぶ展示コースは、1日かけても観きれないほど。
ラファエロ作「キリストの変容」「聖母の載冠」、レオナルド・ダ・ヴィンチ作「聖ヒエロニムス」など、見ごたえのある作品ばかりです。ピエタ像はレプリカがここにあるので、近くでじっくり見たい方はチャンスです。
素晴らしく広大な庭園を持つバチカン市国。毎日催行している「バチカン庭園ツアー」では、ガイド付きを条件に見学することが可能です。
バチカン博物館
住所:Viale Vaticano 100, Roma
電話番号:06 698 84676
入館時間:9~18時
※毎月最終日曜は14時まで
定休日:毎月最終日曜日を除く日曜、祝日
入館料:大人1人16ユーロ、 6歳~18歳は1人8ユーロ、6歳未満は無料
※毎月最終日曜は無料
URL:http://www.museivaticani.va/content/museivaticani/en.html
http://www.museivaticani.va/content/museivaticani/en.html
バチカン市国の観光地③:システィーナ礼拝堂
バチカン宮殿の礼拝堂で、さまざまな宗教行事や枢機卿を選ぶコンクラーヴェもここで行われる大変神聖な場所です。宗教行事等のない日のみ一般公開されています。
ここでの見どころは、ミケランジェロの天井画と彼の壁画「最後の審判」です。システィーナ礼拝堂の中は写真撮影禁止。
また、ガイドも禁止なため、礼拝堂の中庭にフレスコ画を説明するボードを設置。観光客は事前に、ここでガイドからの説明を受けてから中に入ることになります。
システィーナ礼拝堂
住所:00120 Città del Vaticano
電話番号:06 698 84676
入館時間:9~18時
※毎月最終日曜は14時まで
定休日:毎月最終日曜、祝日
入館料:バチカン美術館の入場料を払えば入館可(大人1人16ユーロ、 6歳~18歳は1人8ユーロ、6歳未満は無料)
URL:http://www.museivaticani.va/content/museivaticani/en.html
バチカン市国の首都以外にも国土がある?
イタリアと交わされた「ラティラノ条約」により、ローマ市内外にバチカン市国が主権を持つ場所がいくつかあります。主な施設は以下の4つです。
- サン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂
- カステル・ガンドルフォ教皇庁宮殿
- サンタ・マリア・マッジョーレ聖堂
- サン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ聖堂
上記3つの聖堂とサン・ピエトロ大聖堂は、教皇が建てたローマ四大バジリカといわれています。
カステル・ガンドルフォ教皇庁宮殿があるのは、ローマ郊外にあるカステリロマーニ地方。アルバノ湖を見下ろす風光明媚な場所にあります。
歴代のローマ皇帝や貴族、教皇らの別荘が建てられた場所として有名。白ワインの名産地として有名なフラスカーティや、花の絨毯で知られるジェンツァーノなどがあります。
世界最小国であるバチカン市国の歴史や観光、日本との関係についてまとめ
国全体が世界遺産に登録されており、希少な美術品や歴史的建造物などが集まっています。日本人にはあまりなじみのないバチカン市国ですが、カトリック信者にとっては、とても大切な聖なる場所です。
バチカン市国を訪れる際は、肩やひざなどが出ている露出の多いもの、帽子着用は禁止されています。夏訪れる際は注意しましょう。
世界中から大勢の観光客が訪れるバチカン市国では、どの施設に入るにも行列必至。比較的空いている朝一で訪れるのがベストです。
また、毎週水曜日には法王謁見、日曜日はミサがあり、大勢の信者で大混雑します。観光で訪れる際は、曜日にも注意して、バチカン旅行を楽しんでくださいね。